巌窟王 ~感想~

スポンサーリンク
<スタッフ>
原作:アレクサンドル・デュマ著 「モンテ・クリスト伯」  監督:前田真宏  シリーズ構成:神山修一  キャラクターデザイン:松原秀典  ディジタルディレクター:ソエジマヤスフミ  アニメーション制作:GONZO
<キャスト>
モンテ・クリスト伯爵:中田譲治  アルベール:福山潤  フェルナン:小杉十郎太  メルセデス:井上喜久子  フランツ:平川大輔  ペッポ:中原麻衣

第一幕 旅の終わりに僕らは出会う (2004/10/5) 脚本:神山修一、育原由良  絵コンテ:前田真宏  演出:紅優  作画監督:松原秀典  作画監督補佐:香川久  衣服の模様や髪の幻想的な演出がまず目を引いた。何か一様な紋様をレンズで覗き込んでいるような感覚を抱きました(万華鏡を観ている感覚と近いかも)。ただそれだけではなく、建物や飛空挺その他作品世界を構成するもの全てにおいて高いクオリティを追求し、その上で新たな映像表現に挑戦しようと言う前田真宏監督以下スタッフの意気込みが十二分に感じられましたね。てかTVアニメでコレはスゴくないすか?  ただこれだけ世界観が特徴的だと、(いくら原作が存在するとはいえ)ストーリーが理解不能になったりしないかという心配も出てくる。ですが初回を見る限りではアルベールとフランツの間のセリフ回しは普通と思えるやり取りだったし、それほど難解という印象は受けませんでした。それからキャラクターのデザインもアニメチックな感じだし(松原さんだからある意味当然か)、普通のアニメ作品として今後も楽しめそうな気がします。

第二幕 月に朝日が昇るまで (2004/10/12) 脚本:神山修一  絵コンテ:前田真宏  演出:中山勝一  作画監督:鈴木俊二  はあぁぁ、思わずため息が出てしまうほどの良い出来ですねホント。幻想的な作画と奇を衒わず個々のセリフを丁寧に紡いでゆくことで展開されるストーリー、まさしく映画を観ているような感覚に包まれました。このクオリティを維持できれば、かなりの名作との評価を受けることは間違いないでしょう。  本編:ペッポたんの誘惑に騙されたアルベールが盗賊に捕まってしまう。しかしフランツの奮闘と巌窟王の闇の実力?で見事アルベールは救われる。その過程で、フランツがアルベールに対して友情以上の感情を抱いているようなフシが見て取れた。何だか最近のアニメではこういう同性二人の関係が多くないか?それからペッポたんが男だったなんて、中原麻衣の声にすっかり騙されました(苦笑)  アルベールとフランツをパリへと送る最中、「裏切りの果実は摘み取らなければならない」と伯爵はつぶやく。裏切りとはおそらくはアルベールの両親と伯爵の因縁(具体的な内容は不明だが)を指し、その両親から生まれた果実=アルベールを復讐のターゲットにしたという意味だろう。とにかく来週以降も必見。

第三幕 5/22、嵐 (2004/10/19) 脚本:神山修一  絵コンテ:窪岡俊之  演出:平池芳正  作画監督:石本英治  アルベールの許婚・ユージェニー初登場。彼女の常識的な態度を見ていると、余計にアルベール君の青二才ぶりが際立って面白い。フランツたち悪友?も伯爵の怪しさをアルベールに説くが当の本人は聞く耳持たず。自分を包む殻を破り外へ出たいと願うアルベールにとって、伯爵はこれ以上ないタイミングで現れた目標なのだろう。  録音できない声、写真に写されない容姿、相変わらず謎な伯爵とアルベールの両親がついに対面。どうやら伯爵とアルベールの母との間には浅からぬ因縁があるようだが、当の母親は伯爵の姿を見ても表情一つ変えることは無かった。その母の過去が来週明らかになるようで、見逃せない。

第四幕 母の秘密 (2004/10/26) 脚本:高橋ナツコ  絵コンテ:福田道生  演出:唐戸光博  作画監督:Lee Jong Hyun、Kwon Eun Kyung  メシ食わない、ほとんど寝ない、だがアルベールの母・メルセデスの得意料理のスープだけは美味しそうに食べる伯爵。一方メルセデスも伯爵から投げかける言葉に色々と思うところがあるらしく、答えにつまったり顔を俯かせたりと謎な態度を取る。  食事の後、ぶどう棚の下で伯爵と婦人はいい雰囲気を作り出す。その光景を見つめていたペッポたんは皮肉な言葉を投げかけ、アルベールは不埒なことを言うなと言い返す。だがメルセデスが若い男が写った1枚の写真をじっと見つめているシーンを、アルベールは見てしまう。アルベールと別れた後、伯爵は謎の少女エデとともに父の墓参り。「今戻ってきた」との伯爵の言葉が重い。  再び伯爵邸に招かれたアルベールたち。その邸宅の地下には巨大かつ幻想的な黄金郷が広がっていた。どういう構造しとるんじゃココは(苦笑)。伯爵はアルベールの姿を見るなり剣を抜きその首に突きつけたがこれはフェイント。すぐさま剣を引きアルベールに剣を手渡したが、その意図はやはり謎だらけだ。

第五幕 あなたは婚約者を愛していますか (2004/11/2) 脚本:高橋ナツコ  絵コンテ:加藤敏幸  演出:山田弘和  作画監督:Kim Dong-Joon  伯爵邸の地下は巨大な桃源郷。ここで起こることは全て夢か幻か、そう思わせるような壮大さである。自分を含め、愛の無い結婚を当然のように行うパリの貴族をマクシミリアンは痛烈に批判し、その矛先はアルベールの両親まで及んでしまう。当然アルベールは激怒し、何と友人同士剣で決闘という事態に突入してしまう。この地下では人の心を狂わす何かがあるような、そんな感じだった。  決闘はアルベールの完敗、所詮は軍人のマクシミリアンとおぼっちゃまのアルベールの実力差は歴然としていたのだ。海に落ちてしまったアルベールをすぐさま伯爵は助けたが、ユージェニーに対する自分の気持ちをアルベールは整理できない。アルベールの心に眠る、もう一人のアルベールが見えるという伯爵。アルベールと自分が出会ったのは運命だと断言する伯爵に、アルベールも引かれてゆく一方だ。来週はユージェニーの憂鬱が見られそうで楽しみである。

第六幕 彼女の憂鬱、僕の憂鬱 (2004/11/9) 脚本:山下友弘  絵コンテ:福田道生  演出・作画監督:和田高明  ユージェニーのオヤジ・ダングラール男爵の余りに派手な衣装を見てると眼が痛くなってきました(苦笑)。その男爵は今のパリで最も勢いのある銀行家、金こそこの世の全てだとの主張が彼の身体全体から感じられる。仕事だけに生きる父のせいで母ビクトリアと友人リュシアンの浮気という事態に発展したことで、ユージェニーが父を軽蔑するのはある意味当然の成り行きとも言える。だがそんな彼女の憂鬱を汲み取ってやれないアルベール、やはりこのお坊ちゃまにユージェニーたんは任せておけねーな(笑)  オペラ座では結局アルベールとユージェニーは別の席、一方マクシミリアンとヴァランティーヌがいいムード。今後は彼女をめぐり一悶着ありそうだ。亡きプリンスが居座っていたという座席にモンテクリスト伯爵が居座っていた事実に、アルベール父・フェルナンは愕然とする。そしてそのフェルナンをエデは厳しい表情で睨みつける。彼らの因縁が相当深いことだけは確かなようだが...

第七幕 秘蜜の花園 (2004/11/16) 脚本:神山修一  絵コンテ・演出:鵜飼ゆうき  作画監督:熊膳貴志  エデが気を失った理由はアルベールの父・フェルナンを見たからだ。フランツの許婚ヴェランティーヌに恋をしてしまったマクシミリアンはフランツに宣戦布告。フランツがヴァランティーノを女の子の中の一人としてしか見ていないと知ったマクシミリアンは、アルベールと共にヴァランティーヌの自宅に乗り込みいきなり告白。せっかくのアルベールが組み立てた段取りをぶち壊してしまったが、アルベールの必死のフォローにもヴァランティーヌは困惑し、帰ってとアルベールに涙ながらに訴えた。  一方、『マダムキラー』モンテ・クリスト伯爵の矛先は、ヴァランティーヌの継母・エロイーズにも及んでいた。伯爵のことを直ぐに気に入ったエロイーズは、自分の隠れ家・花園に招待する。エロイーズが花の毒にも興味を持っていることを知った伯爵は、隠し針付きの指輪をエロイーズに手渡す。そして熱い抱擁を交わしながら、まるで彼女の夫をその指輪で殺せという意味にも取れるセリフを口にする。その光景をアルベールはしっかりと見ていたが...  秘密ではなく秘「蜜」、『甘い蜜には毒がある』とは良く言ったもの。伯爵の魔の手は甘い蜜を持つマダムたちを強力な毒へと変化させる。今のところアルベールへの復讐の具体的な形はあまり見えてこないが、彼女たちを虜にすることは彼の復讐のための重要なステップなのでしょうね。

第八幕 ブローニュの夜 (2004/11/23) 脚本:神山修一  絵コンテ:若林厚史  演出:岡崎幸男  作画監督:清川修二郎  考えてみれば、モルセール将軍、ダングラール伯爵、そしてヴィルフォール主席判事の3人はそれぞれ、軍・財・法という国家の中枢を担っている人物だ。その彼らをモンテ・クリスト伯爵は別荘に招き、パーティを開くとなればタダで済むわけがありません。一方、ヴァランティーヌはフランツのことが好きなのだと言うアルベール、相変わらずの人の良さで涙が出てきますホントに(苦笑)。  伯爵はパーティで好青年・カヴァルカンティ公爵を紹介するが、その名を聞いてヴィルフォールとビクトリアは驚愕、というよりも恐怖に慄いていた。この二人、過去にこの館でなにやらヤバイことをやらかしているようだが。一方、先週すっかり伯爵の毒牙にかかってしまったエロイーズ夫人は、指輪に仕込んでいた毒を紅茶のポッドに入れた。そして紅茶を入れたカップをヴァランティーヌに優しく手渡す。  追い討ちをかけるように伯爵は、3組に分かれてこの館の秘密の部屋を探すというゲームを提案。アルベールはヴィルフォールとビクトリアを先導し、目的の部屋に辿り着いた。ご褒美として伯爵が彼らに見せたのは小ぶりの宝箱、だがそれを見たビクトリアは何と気絶してしまった。まだまだ目が離せない展開が続きます。

第九幕 闇色の夢を見た (2004/11/30) 脚本:高橋ナツコ  絵コンテ:若林厚史  演出・作画監督:瀬尾康博  倒れたビクトリアを尻目に、ヴィルフォールは伯爵に銃を向ける。がそこへダングラールがやってきてとりあえずその場は収まった。だがヴィルフォールの伯爵に対する疑惑まで収まるわけは無く、手下に伯爵の正体を徹底的に暴けと厳命する。一方、アルベールお坊ちゃまはカヴァルカンティに「伯爵の本当の気持ちが分かるのはオレだけだ」と宣言され胸中は穏やかではない。このセリフから、カヴァルカンティは伯爵の復讐の重要なパーツの1つなのだろうが...  フランツは伯爵の額の紋章、そして「巌窟王」と呼ばれている事実を知り、顔を歪ませる。そのフランツは、マクシミリアンとヴァランティーヌの二人の気持ちを認めていた。出きるならばこの二人に幸せになって欲しいと。彼もまた、かなわぬ恋の気持ちを抱く人間だったことか、マクシミリアンとの会話で明らかになった。  そんな中、アルベールがいきなり倒れてしまった。原因はヴィルフォール家用の水差しに入っていた毒だと、伯爵はアルベールを看病しながら言う。それを聞いたアルベールは、ヴァランティーヌに危機が迫っていることを察知しすぐに彼女の元に駆けつける。だが既にヴァランティーヌは毒入りのジュースを飲み倒れてしまっていた。その光景を部屋の扉の向こうから見ていた金髪はユージェニー?エロイーズと二人きりになった伯爵の表情は何とも面倒臭そうだった。  伯爵に助けを求めに来たアルベールだったが当の伯爵は不在、そして伯爵がいなければ何もできないとカヴァルカンティはアルベールに言い放つ。嵐の中、あの小さな小箱を抱きながら呪いだとつぶやく。

第十幕 エドモンからの手紙 (2004/12/7) 脚本:山下友弘  絵コンテ:窪岡俊之  演出:唐戸光博  作画監督:Lee Jong Hyun  エドモンって誰?そんな疑問を抱く間もなく、ストーリーは進んでいく。マクシミリアンはヴァランティーヌを自宅に匿うとヴィルフォールに申し入れるが、ヴィルフォールは厳として突っぱねた。そのヴィルフォールは自分が雇った探偵・ボヴィルから、伯爵の調査ルート上に偶然現れた一人の神父のことを耳にする。その神父はルイ・ダンテスという老人のことを調査しているのだと言う。  そんな中、貴族3家の主に葬儀の案内状が届く。その案内状にはエドモン・ダンテスという名前が記されていた。が、その名前を見た瞬間、3人は全く同じように驚愕の表情を浮かべたのだ。その名は3人の黒い過去に大きく関係するようだが...そんな時、暢気にも?アルベールはヴァランティーヌを家から出してもらうよう、父フェルナンに依頼しようとしていた。だが案内状を読んでナーバスになっていたフェルナンは息子に激怒する。アルベールは母・メルセデスにダンテスの名を聞くと、父と同じように母の表情も一変。気になるアルベールは葬儀に向かう両親の後を付ける。  教会に集められた3貴族の主、そこにカドルッスという小汚い老人が加わる。当然3人とは顔見知りの彼にも案内状が届いていた。過去に罪を犯したのはこの4人か。3人がカドルッスに棺を開けさせると棺の中には眼鏡をかけた一人の青年が横たわっていた。その男はボヴィル、ヴィルフォールが雇った探偵だ...  一方、ヴァランティーヌを連れ去るべく屋敷に忍び込んだマクシミリアンに、フランツとルノーも協力する。がしかし、屋敷から脱出する3人の前に、エロイーズ夫人が立ちはだかる。そして時を同じくしてヴィルフォールが帰宅してきた。3人+娘の姿を目にしたヴィルフォールはすぐに事態を理解し、銃を持ってマクシミリアンたちに近づく。

第十一幕 婚約、破談 (2004/12/14) 脚本:山下友弘  絵コンテ:福田道生  演出:山田弘和  作画監督:Kim Dong joon  ヴァランティーヌ奪還作戦は、突然エロイーズが倒れてしまったことで、マクシミリアンたちの勝利に終わった。マルセイユに辿り着いたマクシミリアンとヴァランティーヌは、これから静かで平和な暮らしを送るのだろうか。  一方、モルセール家ではフェルナンとメルセデスがエドモンの手紙のことで激しい口論となってしまう。メルセデスにエドモンの手紙のことを聞かれたフェルナンは、彼は遠い宇宙の彼方に飛ばされ死んだはずだとうわ言のように繰り返す。そのエドモンをどうやら愛していたメルセデスは、彼が死んだことでフェルナンと結婚したことを思わず口に滑らせてしまう。再びフェルナンは激怒し、そして両親の口論をアルベールは聞いてしまった。フェルナンたち3人がエドモンに行った仕打ちが、伯爵の陰謀の全ての元凶であることはもはや疑いようが無い。  アルベールの伯爵への尊敬は深まるばかりだ。今回もフランツの警告も全く聞く耳をもたず、運命を自分の意志で貫き通すという伯爵の言葉に深く共感する。ヴィルフォール判事は毒に侵されながらも回復したエロイーズに、あの指輪のことを厳しく問いただす。自分にはエドワールさえいれば良いと言い切ったエロイーズに、判事は密かに毒を盛り、病院へと送り出してしまった。  そして今週のサブタイトル。せっかくユージェニーといい雰囲気になったアルベールだが、彼女との婚約を破談したいとダングラールから申し出があったことをアルベールは知る。しかもユージェニーの新たな相手は、あのカヴァルカンティーだ。またしても嵐の予感。

第十二幕 アンコール (2005/1/4) 脚本:高橋ナツコ、有原由良  絵コンテ:前田真宏  演出:中山勝一  作画監督:鈴木俊二  ユージェニーもやはり、アルベールのことが好きだったのね。分かっちゃいたけど相手が相手なだけに何故か悔しい(苦笑)。ダングラールとカドルッスに「モンデゴ」と呼ばれたフェルナンは、(おそらく)過去のいきさつについて、カドルッスに脅しをかけられた。フェルナンおじさんも、どんどん深みにハマって行くね...  モルセール家の良からぬ噂は、モンテクリスト伯爵がリークしたものだとカヴァルカンティに聞かされたユージェニーは、アルベールのことをフランツに相談する。伯爵に会ったことで、アルベールは変わったと彼女は言う。それはユージェニーにとって、まさに恋人を取られたような気分だったのだろうか。ただ何にせよ、フランツに話を聞いてもらったことでユージェニーの気分は少しばかり晴れたようだ。しかし逆にフランツは、また少しアルベールとの距離が遠くなったと感じたのかもしれない。  演奏会当日。アルベールは招待状を持っているにも関わらず、ダングラールに門前払いを食らわされる。だがリュシアンの取り成しでアルベールはステージ裏からユージェニーの勇姿を見守るのだった。1曲目の演奏後、二人は抱きしめあってお互いの気持ちを確かめ合う。が、ここぞと言う時にユージェニーに葡萄を差し出したアルベール君、相変わらずピントがズレてると思うのは私だけでしょうか?(苦笑)。  だがアルベールだけのために弾くといった次の曲の演奏が終わった後、花束を持ったカヴァルカンティがステージに乱入。だが今回のステージは彼がユージェニーのために用意したものであり、当然と言わんばかりにカヴァルカンティはユージェニーへ口づけをする。そしてアルベールはダングラールにステージから追い出されてしまった。  打ちひしがれたアルベールを、図ったようにモンテクリスト伯爵が迎える。伯爵の胸に飛び込み、アルベールは自分の無力さを嘆く。だが二人の前にヴィルフォールが立ちはだかる。彼は言う、伯爵に殺人事件の嫌疑が掛けられていると。嵐はまだまだ続く。

第十三幕 エデ (2005/1/11) 脚本:神山修一、有原由良  絵コンテ:宮尾和佳、前田真宏  演出・作画監督:和田高明  殺人者の罪を着せようと殴り込みをかけたヴィルフォールだったが、伯爵は証人としてなんとエロイーズを準備していた。またしても伯爵に一杯食わされてしまったヴィルフォールだが、彼の憎悪は更に深まった。オペラ座では想い人が自分の最高の演奏を聞かずに去ったことにユージェニーは気落ちしていた。そんなユージェニーの心に、カヴァルカンティは静かな足音で少しずつ踏み込んでくるようだ...  ダングラールはフェルナンに大統領選の資金援助を打ち切ると言う。フェルナンは怒り心頭だがダングラールは聞く耳持たず。そしてヴィルフォールはこれまでの判事の職を負われてしまう。彼らの黒い絆はもう崩壊したも同然だ。フランツは内務省一等書記官のリュシアンの力を借り、「巌窟王」の正体を明らかにすべく内務省の機密DBに侵入する。何と牢の中で1000年も生き続けた巌窟王が死んだのは10年前らしい。だがその先の事実はリュシアンの権限を持ってしても明かすことはできず。リュシアンは元内務省特務機関の長官・ノワルティエ老人の力を借りることを提案する。  自暴自棄になったフェルナンが帝国に攻撃を仕掛けるなか、アルベールは病に伏したという伯爵の見舞いにやってきた。だがエデは伯爵を一人にして欲しいと言う。そして彼女は辺境の星の王女から地球軍の裏切りに遭い両親は殺され奴隷同然の生活への転落、そして伯爵から「買い上げられ」今に至る暗い過去を語るのだった。これはアルベールの純粋な心がエデの心を開かせた結果なのだろうか。  だがアルベールが席を立った直後、エデの心の奥底にある復讐心は隠し切れないといつの間にかやってきたカヴァルカンティは断言する。エデの復讐の対象は、もしかしたら地球軍人であるフェルナン、そして息子であるアルベールなのか。エデは自分と似たもの同士だ、そう言ってせせら笑ったカヴァルカンティを伯爵は追い出したが、エデは伯爵と出会って捨て去ったはずの復讐心がまだ残っていることを伯爵に告白する。そして突然やってきたヴィルフォールが銃を構えて伯爵の前に立つ。アルベールは伯爵を助けるべくヴィルフォールに向かって体当たりを敢行したが、直後に銃声が鳴り響いた。

第十四幕 さまよう心 (2005/1/18) 脚本:山下友弘、有原由良  絵コンテ:加藤敏幸  演出:佐藤英一  作画監督:松本卓也  思わぬ邪魔者の登場に完全にキレたヴィルフォールは、何とアルベールに向けて発砲!しかし寸前で伯爵がヴィルフォールを突き飛ばし、アルベールの命を救った。ヴィルフォールは警察に連行されるがその最中、次はモルセール家に災厄が降りかかるとアルベールに向かって叫んだのだ。伯爵はアルベールを家に返したが、その彼は左胸に銃弾を受け重傷を負っていた。が、部下の治療によりあっさりと弾は身体から取り除かれた。これが不死身に見える伯爵のヒミツか!?  アルベールの家にマクシミリアンがやってきた。彼はノワルティエを迎えに来たのだと言い、アルベールと固い握手を交わした。一方、カヴァルカンティがやってきて以来儲けまくりのダングラールの頬は緩みっぱなし。だがカヴァルカンティはヴィルフォールの事件を持ち出し、人間関係に気をつけろと警告する。主導権は確実にカヴァルカンティに移りつつある。  カドルッスはフェルナンの過去ネタを持ってボーシャンに接触。そのボーシャンは大統領選記事作成のためアルベールにインタビューを試みる。清廉潔白な父親像を語るアルベールは、ボーシャンからカドルッスの名を聞き動揺し、そんなアルベールの態度を見たボーシャンは、フェルナンの過去の調査を決意した。  街を歩くアルベールはカヴァルカンティとユージェニーの婚約のニュースを耳にし、ダングラール家に急行するがあっさりと門前払いを食らってしまう。一方、自分の知らない間に婚約を決められたユージェニーもアルベールを探しに外出するがこちらも成果なし。このまま二人は、すれ違ったままになってしまうのか...  傷心のアルベールは、隠れ家で久々にフランツと再会する。ケンカのわだかまりももう無かったはずだった。自分の周りの人間がどんどん変わってゆく、その現実にアルベールは自分すらも変わってしまうのではないかと恐れる心をフランツにぶつけるしかなかった。フランツは真実を見極めるため単身ルナに向かうと言う。フランツすらも自分を見捨ててしまうのか。アルベールは涙を流しながら隠れ家を飛び出した。  雨でずぶぬれとなったアルベールを、偶然(?)近くを通りかかった伯爵が見つける。新たな宇宙への旅の誘いを一度は断ったアルベールだが、伯爵は深く傷ついたアルベールをほって置けないと車を降り再び旅に誘う。ユージェニーはアルベールが旅立った事を知り、二人の関係が終わったことに涙する。伯爵とアルベールが新宇宙への旅に出たその時、フェルナンの演説が始まっていたが、その現場にエデが出た。どうなるこっちゃ...

第十五幕 幸せの終わり、真実の始まり (2005/1/25)
第十六幕 スキャンダル (2005/2/1)
第十七幕 告白 (2005/2/8) #15 脚本:高橋ナツコ  絵コンテ:窪岡俊之  演出:神戸洋行  作画監督:清川修二郎
#16 脚本:神山修一、有原由良  絵コンテ:福田道夫  演出:岡崎幸雄  作画監督:Lee Jong Hyun
#17 脚本:有原由良  絵コンテ:前田真宏  演出:山田弘和  作画監督:松原秀典、鈴木俊二  3週分纏めて視聴。さすがにボリューム満点で作業が大変だ...  #15:25光年彼方の宇宙を旅するアルベールと伯爵。伯爵が語る男二人と女一人の恋愛もつれ話は、どう考えても彼自身の復讐そのものとしか思えない。そして憎悪は宇宙の闇でこそ増幅すると静かに語るのだった。が、その憎しみ渦巻くエピソードを聞いて、アルベールはいきなり泣き出してしまう。人の心に失望していたアルベールだが、伯爵との絆だけは真実のものだと信じたい、その一心が生み出した涙だった。  旅立つ前のフランツに遭うユージェニー。アルベールもフランツも旅に出ることで、大きな孤独感を感じるユージェニーに、フランツは励ましと警告の言葉を送る。そのフランツはノワルティエの元を訪れ、彼に巌窟王の正体を聞き出そうとする。すると巌窟王の名を口にした直後、ノワルティエの義手から彼の精神へのアクセスキーとなるペンが表れた。そしてペンで書くべきキーワードはヴァランティーヌが知っていた。シャトー・ド・イフ(マルセイユ沖に浮かぶ監獄の名)に幽閉されたエドモン・ダンテス...  遠からずパリを去るという伯爵、彼にとってパリでなすべきことはもう終わろうとしている。そのパリではエデがフェルナンの演説に飛びいり参加。応援演説のフリをしていたエデだが、公衆の面前でついにモルセール将軍、いやフェルナン・モンデゴの裏の顔を明らかにしてしまった。エデの首に刻まれた刻印がその全ての証と、エデは激しい感情を込めて吐き捨てる。だがフェルナンへの復讐が成ったにも関わらず、エデは憎悪にまみれた自分の心に大きく失望していた。そして伯爵には同じ思いをさせてはならない、と。  その伯爵は、父・フェルナンのそばにいてあげて欲しいと、アルベールを地球に帰そうとする。そして全てを知ることになるアルベールと、これが最後の会話になるかもしれないと言う。二人の絆を信じていたアルベールには伯爵の言葉が信じられないが、伯爵は静かに別れを告げアルベールを小さな船で地球に帰す。アルベールを見送った後、伯爵はいきなり狂喜の表情を浮かべながら高笑いし、都へ帰ると宣言する。真の復讐鬼と化した伯爵は、もう誰にも止められないのか...  #16:エデが巻き起こした父フェルナンのスキャンダルを知ったアルベールは宇宙軍の大本営へ急ぐ。だが父はそこにはいないと聞き、アルベールは父を信じているとの伝言を残す。その父・モルセールは何と居留守を使って人を遠ざけていた。自分を信じるという息子の気持ちを聞いたフェルナンだが、それを噛み締める余裕はいまの彼には無い。  ユージェニーもモルセール家を訪れようとするが外出禁止令を出していた父に見付かってしまう。それどころかユージェニーの行動を浅はかだと彼女を引っぱたいてしまう。心無い父の行為に涙するユージェニーにいつものようにカヴァルカンティーが近づき、自分が代わりに様子を見てくると言う。少しずつだが、ユージェニーの心の中で彼の存在が大きくなっているのかもしれない。  父に関するポーシャンの記事を読んだアルベールはすぐさまポーシャンの元を訪れ彼を殴り倒す。だがポーシャンが語るモンデゴ(とヴィルフォール)の真実に、アルベールは背を向けるしかなかった。だが街中を歩くアルベールに注がれる人々の冷たい視線に、彼の心は今にも割れそうだ。フランツはマクシミリアンの家族の温かさに触れ、彼自身も元・恋敵とオープンな会話を交わす。とその時、家に飾ってある絵に航海士・エドモン・ダンテスと、そばに寄り添う女性を発見する。  アルベールが家に戻ると、周囲は記者の山。と、ベッポが秘密の抜け穴にアルベールを導く。そしてベッポは小声でさよならを告げるのだった。だが、家で待っていた母・メルセデスから、やはり父は偽名を使っていたこと、そして本当は貴族でないことを知らされる。そしてエデの演説を信じざるをえなかった母に背を向け、アルベールは伯爵の家に急ぐ。マクシミリアンの手によって、フランツはエドモン・ダンテスのリストを調べる。今の伯爵の顔つきとは全く違う。だが同じ船にはダングラールも乗船していたことが判明。そしてエドモンの結婚式の風景...フランツはエドモンが生きていると確信し、急いでパリへ戻る。  アルベールが伯爵家に向かうと懐かしの盗賊団、そしてベッポが彼の前に立ちはだかる。ベッポは伯爵の命によりアルベールを監視していたのだ。信じていた人々が次々と自分を裏切っていく。館を発ったというエデにアルベールが追いついた直後、エデの頭上から宇宙船が現れた。ついに伯爵がパリに帰ってきた。  #17:伯爵帰還。アルベールにとって伯爵は正に、最後の望みの一縷。だが、父の犯した罪の生き証人であるエデをそばに置き、そして復讐相手の息子であるアルベールに近づいたこと、全ては必然だったと伯爵は笑みを浮かべて語る。伯爵とともに過ごした時間は全て幻だったことを、未だアルベールは信じられない。だが涙を流してそう話す彼を、伯爵は嘲笑の元に一蹴するのだった。  復讐の役に立ったことを感謝し、伯爵はアルベールに背を向ける。だが直後、アルベールは伯爵に白手袋を投げつけ、決闘を申し付ける。時刻は明朝5:00、場所はブローニュの森。伯爵はその申し出を毅然とした態度で了承した。伯爵が去った後、アルベールは伯爵から貰った金の時計を怒りに任せて叩き割る。馬車に乗った伯爵の額から巌窟王の紋章が不気味な光色で浮かび上がる。苦しむ伯爵は、まだその時ではないと巌窟王に言うのだった。  彷徨い歩くアルベールの前に、フランツが戻ってきた。アルベールはフランツが自分の為を思ってくれていたことをようやく理解した。だが決闘のことを聞いたフランツは怒り、そして伯爵とアルベールの両親のエピソードをアルベールに話した。驚愕するアルベール。一方、母メルセデスは伯爵の元を訪れていた。25年間、片時もエドモンのことを忘れたことは無かったと涙ながらに語るメルセデスに、エドモンはもう死んだのだと伯爵は言う。そして彼女を決闘の場に招待する。  全てを知ってもなお、アルベールは決闘への意志を曲げない。家に戻ったアルベールは、家宝の剣を抜き取り準備を整える。フランツはユージェニーの元を訪れる。明日はアルベールの誕生日、ユージェニーはアルベールに自作の曲をプレゼントとして用意していた。彼らはPM3:00から3人だけのパーティをしようと約束する。  伯爵が静かに闘いの準備を進める一方でアルベールは決闘前夜にもかかわらずフランツと飲み明かす。「伯爵恐れるに足らず!!」、アルベールは酒の勢いで高らかに宣言するが、我々の不安は募るばかりである...

第十八幕 決闘 (2005/2/15) 脚本:有原由良  絵コンテ:前田真宏  演出:唐戸光博  作画監督:恩田尚之  海辺で仲良く遊ぶ二人の男と一人の女性。この光景は、いつのものなのだろうか。そして現在、鋼鉄の鎧をその身に纏った伯爵とアルベールが、ついに剣を交えるときが来た。先に襲い掛かったのはアルベール、だが伯爵も激しく反撃しお互い全く譲らない。そんな中、アルベールの母・メルセデスが決闘の場にやってきた。眼前の光景が信じられないメルセデスは、息子を守る義務があると叫んだ。だがアルベールから伯爵に申し込まれたこの決闘は誰にも止めることはできないと、伯爵の部下は言う。  伯爵の強烈な攻撃がアルベールに炸裂。アルベールの左手を斬り捨てた瞬間、エドモンの痛み、そして孤独を全て自分が引き受けるとメルセデスは絶叫する。だが伯爵の攻撃は止まらない。右手、そして足、次々とアルベールの肢体を斬り刻んだ伯爵は、最後にアルベールの胴体を真っ二つに斬り捨て、メルセデスにエドモンは既に死んだという何よりの証拠を見せつけたのだった...  CM明け、酒の勢いで眠りに落ちていたアルベールがようやく目覚めた。彼のそばには何故か睡眠薬が。そして一緒にいたはずのフランツ、そして鎧が無い。ま、まさか!!  瀕死の相手にゆっくりと近づく伯爵、だがその鎧の下のフランツは、この瞬間を待っていたのだ。巌窟王となった男は人で無くなる。怒り、悲しみ、憎しみ、全ての感情が無くなるはずの巌窟王、だがそれを恐れた今の伯爵には、心臓が残っている。これこそが、伯爵の最大の弱点だとノワルティエの精神がフランツに教えていた。  鎧を脱ぎ捨てだ伯爵が止めを刺すべく剣を振り上げたその瞬間、フランツの最後の一撃が伯爵の心臓を貫いた。暫く動きを止めた伯爵、だが彼の心臓は再び鼓動を刻み出してしまった。止めを刺すことができなかったフランツを、伯爵は全ての憎悪の念を叩き込むように、鎧の上から剣を突き刺した。ユージェニーがバースディカードを横目に見ながら3人だけのパーティの準備を進める。もう見てられないよ...  すぐさまフランツの鎧を脱ぎ去り、彼に包帯を巻くアルベール。だがフランツの流血は止まらない。彼が夢に見たというのは、冒頭の海辺での光景だった。そこで彼らは、アルベールの誕生日を祝ったのだという。だが二人の想い出がこれ以上募ることはもう無い。フランツはアルベールに「ハッピーバースデイ」と言い、息を引き取った。アルベールの絶叫が、悲しく響き渡る。余りの衝撃に、しばらく声が出なかったよ...

第十九幕 たとえ、僕が僕でなくなったとしても (2005/2/22) 脚本:山下友弘、有原由良  絵コンテ・演出:加藤敏幸  作画監督:宇佐美皓一  ユージェニーは喪服姿で静かに涙を流し、そしてアルベールはフランツの墓前で泣き崩れる。一方、次のターゲットをダングラールに定めた伯爵の前に、エデが抗議にやってきた。復讐の鬼となった今の伯爵はエデの言うことなど聞く耳を持たないが、苦しみに歪むその額の紋章は不気味に光っていた...  パリを離れ共に暮らそうと言う母・メルセデスを、アルベールは冷たく突き放した。大人たちの繰り広げた泥沼の愛憎劇のせいで、無二の親友を失ったのだからそれも当然だろう。だが自分こそ死ぬべきだったと言うアルベールを、メルセデスが平手打ち。これが母としてアルベールに打った最後の愛の鞭か。  そのアルベールはあての無い旅に出るが、検問に引っかかってしまう。父の失脚により貴族としての身分を失い、普段は何事も無く通れた門が通れなくなったのだ。しかし振る舞いは未だ貴族のままであるアルベールは、貴族たちへの反抗心を抱える門番たちにボコられてしまった。一方カヴァルカンティはユージェニーの母・ヴィクトリアと真昼間からイチャつく始末。そういえばこの二人は「そういう」関係だったね。すっかり忘れてた(苦笑)。  門番たちを蹴散らしアルベールを助けたのは何とフランツだった。夢のような光景は、アルベールのバースディパーティへと舞台を移す。そこで現れたのは額に不気味な光を抱えた伯爵。フランツの仇である彼の身体に、アルベールは渾身の力を込めて剣を突き刺した。だがその伯爵はフランツに姿を変え、自分を殺したのはアルベールだとつぶやく...もちろんこれは本当の悪夢、アルベールが目を覚ますと眼前にはルノーの姿が。彼がアルベールを救ったのだ。彼らがいるのは、かつて皆でピクニックを楽しんだ場所。その光景を思い浮かべると、アルベールは思わず涙を流す。  ダングラールの株が大暴落し、ついに破産状態に陥ってしまった。起死回生を図る彼は、ユージェニーとカヴァルカンティの結婚を明後日に行うと言う。娘の気持ちよりも金が大事、父のあまりな行動にユージェニーは力なく膝を突く。その夜、彼女はフランツとアルベールと3ショットの写真を胸に独り家を抜け出そうとする。だがその途中、カヴァルカンティに見付かってしまい、ユージェニーの意図を見透かした彼はユージェニーに飛び掛り、何と衣服を剥ぎ取った!!満月の下で悲鳴をあげるユージェニー、せせら笑うカヴァルカンティ(←妙にセリフに力が入ってたぞ関智一!!(笑))。ユージェニーが助けて欲しいと願うアルベールはルノーの車上の人。果たしてアルベールは間に合うのか。

第二十幕 さよなら、ユージェニー (2005/3/1) 脚本:高橋ナツコ、有原由良  絵コンテ・演出:窪岡俊之  作画監督:熊膳貴志  作画監督補佐:松原秀典  ルノーの家で静かに夕食をとっていたアルベールはユージェニー結婚の報を聞く。彼はすぐさまダングラールの館に急行し塀をよじ登ろうとするが、背後にカヴァルカンティが近づく。彼は胸に刻まれた爪痕を見せつけアルベールを挑発。彼曰く、最初は抵抗したユージェニーだが、モルセール、いやモンデゴ一家の名を言った途端大人しくなった。アルベールは自分たちの恋のキューピッドだとカヴァルカンティは高笑いする。そんな彼は、自らの憎悪をぶつける相手が父母妹がであることを語る。第8話の内容を振り返ると、それはやはり、ヴィルフォール、ビクトリア、そしてユージェニーなのだろうか...  ついに結婚式当日。煌びやかな白いドレスを着たユージェニーだが、その表情は曇ったまま。両親に一人にして欲しいと静かに告げたユージェニーは、ピアノの前で音楽院への誘いの手紙に目を通す。結婚式には多くのマスコミ陣が招待されていた。ダングラール家の安泰を知らしめるためだ。一方、結婚式への侵入を果たすべく館の周囲をウロウロしていたアルベールの肩にベッポの手が。ごめんなさい、すぐさま謝ったベッポに対し、もう振り回されるのはたくさんだとアルベールは怒りの表情で叫ぶ。だが直後、ベッポはアルベールの胸に飛び込み頬に口づけ。「あなたが愛する人を救いたいように、自分も愛する人の力になりたい」、ベッポの言葉がアルベールの心を動かした。  結婚の誓いの時が来た。カヴァルカンティが自信に満ちた表情を浮かべ誓約書に署名する一方で、震えが止まらないユージェニーはサインすることができない。周囲が騒ぎ出す中、ダングラールが苦しいフォローしユージェニーはようやくペンを手に取った。だがその直後、館は一瞬の停電に襲われる。すぐさま回復したが、誓約書には大きな黒インクのシミがつき、その誓約書を突如登場したベッポが破り捨ててしまった。  そしてメイドに変装し館に侵入していたアルベールがユージェニーを連れ去ってゆく。すぐさま追いかけるカヴァルカンティだが、リュシアンとポーシャンが見事な連携プレイでカヴァルカンティを止めた。そして歯噛みするカヴァルカンティを警察が取り囲む。詐欺罪、経歴詐称その他、偽貴族である彼の裏の一部が明らかになった瞬間だった。  アルベールとユージェニーはルノーの車に飛び乗りダングラールの館を去って行く。その後姿を涙を浮かべながら見送るベッポ。だがバイバイとつぶやいた彼女は、笑顔で館を去っていった。くーっ、切な過ぎるよホント。こんなピュアな恋心を抱いた彼女を男性と思えという方が無理な相談だ(苦笑)。カヴァルカンティ逮捕の報を耳にした伯爵は、全てが終わった後は、自分たちの夢のために生きろとベルッチオに告げる。これは彼の遺言ともいえる内容では無いのか。彼の最後の復讐も近い。  ニューヨークの音楽院に入学するユージェニーが旅立つ。アルベールとユージェニーは、空港でお互いの愛を確かめ合ったのだった。そしてアルベールはフランツのバースディカードをユージェニーから受け取る。それが遺書となることを、フランツ自身はもう分かっていた。アルベールに会えて本当に良かった、手紙の最後に書かれたその言葉にアルベールはただ涙するしか無かった。そして彼はもう一度伯爵に会うことを決意した。

第二十一幕 貴公子の正体 (2005/3/8) 脚本:神山修一、有原由良  絵コンテ・演出:中山勝一  作画監督:浜川修二郎  パリから逃げ出したダングラール。ありったけの金を詰め込んだケースと自分の腕を手錠でガッチリと結ぶあたり、相変わらず金まみれで笑える。彼が乗り込んだ臨時便は貸切だったはずだが何故か隣りの席には伯爵の姿が。伯爵はダングラールに嘗て結んだ契約を楯に、5兆フランの融資を強要する。窮地に陥ったダングラールは隠し持っていた拳銃を伯爵に発砲するが、伯爵には効き目無し。  嘗てダングラールは船長に上り詰めたエドモン・ダンテスを心の底から嫌悪していた(それは妬みや逆恨みではなく、本能的な感情だった)。そしてフェルナンやカドルッスを巻き込み、偽の告発でエドモンを無実の罪に陥れたのだ。伯爵の高笑いの中、ダングラールの乗った区画が切り離され彼は宇宙(うみ)の藻屑と消えた。一方、アルベールは伯爵の館に殴り込みをかけるがもちろん不在。伯爵の片腕・バティスタンはアルベールを子ども扱いするが、絶対に伯爵に会わなければならないと強い意志を見せるアルベールに次に伯爵が向かう場所を教える。それはヴィルフォールの初公判だと。  その初公判。周囲の関係者-もちろん伯爵やヴィクトリア含む-が見守るなか、ヴィルフォールは伯爵をパリの平和を脅かす不穏分子と言い放つ。だが検事はヴィルフォールの過去に関わる証人を呼び出した。その証人こそ、カヴァルカンティだった。将来を約束された若い裁判官が犯した過ち。それこそが、かつて愛人であったヴィクトリアとの子供、眼前のカヴァルカンティだった。ヴィルフォールは赤ん坊のカヴァルカンティをあの小さな棺に納め、そして地中に埋めたのだ。  もうやめて、ヴィクトリアはその場で泣き崩れる。そして怒りに震えカヴァルカンティを平手打ちにしたヴィルフォールに、カヴァルカンティは一枚の布切れを見せる。それは棺の中に納めた赤ん坊が凍えまいと、父としての最後の愛情。本当に自分の息子だと認識したヴィルフォールに、父親の表情が浮かび上がった。だがその直後、カヴァルカンティはヴィルフォールの首に毒針を突き刺した!!静かに倒れこんだヴィルフォール、白目を剥いて気絶したヴィクトリア、そして周囲の人間に向かって、人はみなドス黒い本性を隠していると言い放つカヴァルカンティ。てーか関智一、アンタはドス黒い性欲を少しくらい隠すことを覚えて欲しいものだが(苦笑)。とにかく、彼の復讐はここに成ったのだ。  マルセイユにてエドモンの旧家を訪れていたメルセデスは、帰ってこないエドモンを、彼の父と共に待ちつづけた過去を静かに思い出していた。そして毒に倒れたヴィルフォールの前に伯爵が立つ。前船長からエドモンが託された手紙は、パリを混乱に招く機密文書。それを見たヴィルフォールはエドモンを葬ることを決意した。ヴィルフォールに徐々に回りだす毒は、彼の脳を少しずつ破壊する。これで二人目。  その頃、パリを追われていたフェルナンが軍艦を率いて戻ってきた。彼は一体何をやらかそうとしているのか。そして裁判所から出てきた伯爵と、外で待っていたアルベールがついに再会を果たす。

第二十二幕 逆襲 (2005/3/15) 脚本:山下友弘、有原由良  絵コンテ:福田道生  演出:山田弘和  作画監督:Kim Dong Joon  レイアウト作監補:松原秀典  宇宙艦隊を引き連れパリに舞い戻ってきたフェルナンは国民議会を占拠、そして議会を解散させパリに戒厳令を発令。フェルナンはその力で国家を乗っ取ったのだ。マルセイユにいるメルセデスは、暴挙に出たフェルナンの元に戻るべく動き出す。  自分はもう逃げない、アルベールのその言葉に伯爵は復讐の全てを話し始めた。結婚式の前夜祭で、エドモンはフェルナンとダングラール二人の密告により、プリンス暗殺という無実の罪によって連行された。そして相談に乗ったヴィルフォールに船長からノワルティエに渡すよう託された手紙を見せたが、何とその手紙には暗殺に関わった者としてヴィルフォールの名も含まれていた。それを預かったヴィルフォールは保身を図るべく手紙を抹消し、エドモンはイフ城へと送還された。自分をハメた人物たちは、プリンスの暗殺という自分の冤罪を利用し軍事、経済、司法の要職に就いた。深い暗闇に覆われたイフ城にて、彼らに対する復讐を誓ったエドモンの額に巌窟王の紋章が宿ったのだった。  自分の知っている伯爵は、もうどこにもいなくなったのか。そんなアルベールの叫びも今の伯爵には届かない。その時パリの街は宇宙軍の戦艦が放つ大砲で、まさに破壊の限りを尽くされようとしていた。二人の立つ橋も、真っ二つに分け隔たれてしまった。空に浮かぶ大戦艦の姿を目の当たりにしたアルベールは、父の元に急ぐ。  エドモンは自分たちのすぐそばで生きていると、メルセデスはフェルナンに告げた。モンテ・クリスト伯爵こそ、そのエドモンだと。驚愕するフェルナンは、彼は復讐するために戻ってきたとつぶやく。どうして親友だったはずの二人が復讐など...そのメルセデスの問いに、フェルナンは自分がエドモンをハメたのだと告白した。順調に出世して行く彼の背中を見つづけることに自分は耐えられなかった、そしてメルセデスの奇麗事がこんな事態を招いたのだと彼は叫んだ。メルセデスの瞳に涙が浮かぶ。しかしすぐにフェルナンはメルセデスに謝罪する。そんな彼にメルセデスは「パリを離れましょう」と静かに言う。拒絶したフェルナンに対し、貴方との日々は忘れない、さようならとメルセデスは別れを告げた。  だがその直後、司令室に銃声が鳴り響いた。アルベールがその場に駆けつけたとき、既にメルセデスは地面に倒れて動かない。「どうして...」、絶望するアルベールに追い討ちをかけるように、何とフェルナンは妻と同じくらい愛している息子に発砲した。そして自らは自殺を図るが、引き金はついに引けなかった。  アルベールを助けるべく、ベルッチオとバティスタンが宇宙船に突撃。地面に不時着した宇宙船の中に二人は飛び込んで行くが、アルベールは虫の息。そして肝心のフェルナンは鎧に身を包み、伯爵、いや、エドモン・ダンテスの元に急ぐ。奴が生きている限り、自分も死ねない。そして彼がそうしたように、自分も彼の全てを奪ってやる。二人の激突は、どう考えても避けられない。

第二十三幕 エドモン・ダンテス (2005/3/22) 脚本:有原由良  絵コンテ:前田真宏  演出・作画監督:和田高明  レイアウト作監補:松原秀典  「ようこそ我が館へ」、快く迎えた伯爵にフェルナンは容赦なく剣を突き刺した。だがそれは幻影、すぐさま本体が現れフェルナンに剣を叩き込む。それを伯爵は、「復讐の鉄槌」と表した。一方、腹部に銃弾を受けたアルベールが眠りから目覚める。メルセデスも辛うじて一命を取り留めていた。父を止めねばならない、アルベールの声にベルッチオとバティスタンは船の進路を伯爵の地下宮殿に向けた。  巌窟王に身体を支配され苦しむ伯爵を、エデは助けることができなかった。もうエデの声は自分に届かない、伯爵はそう言い残すと最後の復讐に心を預ける。フェルナンを徐々に傷つけ追い詰めて行く伯爵は、簡単には死なせないと笑みを浮かべて語る。だがフェルナンを見下ろしていた彼自身も、苦痛がピークを迎えてしまった。その隙にフェルナンは伯爵に刃を投げつけダメージを与えることに成功する。そして苦痛に耐えられず鎧を脱ぎ捨てた伯爵の身体に剣を突き刺した!!  だが、やはり巌窟王に身を捧げた伯爵は不死身、身体を不気味に光らせながら恐れ慄くフェルナンにゆっくりと近づいて行く。その時、伯爵の前に再びエデが立つ。自分の命が尽きようとも愛する人を失いたくない、エデの純粋な心はいつまでも変わらない。だがそのエドのこめかみにフェルナンは銃を向けた。形勢逆転か。だが館に辿り着いたアルベールのこめかみに、同じようにベルッチオが銃を向けていた。伯爵はベルッチオに引き金を引くよう冷徹に命じる。傷つくのは自分だけでいい、アルベールの願いにフェルナンは上空に向かって銃を放ち、そして息子の命を助けて欲しいと伯爵に額を地に付けて懇願する。  そんなフェルナンに対し、笑みを浮かべながら伯爵は言う。自分の復讐は死ではなく、絶望だと。直後、伯爵自らがアルベールに銃を向け、そして発砲した。だがその銃弾を受けたのは何とバティスタンだった。息絶えたバティスタンを見届け、アルベールは叫ぶ。人の命よりも大事なものは何なんだと、お互い意地を張り合い、自分を騙しつづけているだけだと。だが巌窟王は、伯爵の気持ちが分かるのかと不気味な紋様を輝かせながら言い、そして契約は成立したと静かに告げた。  運命は自らの手で切り開くもの、アルベールは背中を向け去ろうとする伯爵の前に駆け寄り、そして伯爵を力強く抱きしめた。直後、苦痛の余り絶叫する伯爵から紋様が消え去り、その姿はエドモン・ダンテスその人に変わっていた。エドモンはアルベールに銃を向け復讐の続きを果たそうとするが、刃の残った心臓から鮮血が溢れエドモンの身体を染め上げた。最後までアルベールを殺そうとするエドモンの手を握り締め、アルベールは何があっても行き続けると誓った。その言葉を聞いたエドモンは、エドモン・ダンテスという名を忘れないで欲しい、そう言い遺し息を引き取った...  エドモンが息を引き取った後、館が崩壊を始めた。エデは伯爵と最後を共にする意志を固めていたが、「伯爵はそんなことを望んでいない」とアルベールはいい、エデの手を取り脱出を図る。フェルナンはアルベールを先に生かせ、そして自らはエドモンの亡骸の前に膝まづき、自らに銃弾を撃ちこんだ。辛うじてベルッチオの船に乗り込んだアルベールとエデは、崩壊して行く地下宮殿を静かに見送った。その湖の畔には、エロイーズとエドワールの姿があった。

最終幕 渚にて (2005/3/29) 脚本:有原由良  絵コンテ:前田真宏  演出:前田真宏、市村徹夫  作画監督:鈴木俊二  レイアウト監修:松原秀典  崩れ去った地下宮殿とパリの街。復讐にまみれた夏は、ついに終わりを告げた。5年後、王国と帝国が和平の道を突き進み、パリには民主化の波が押し寄せていた。マルセイユでは軍を除隊したマクシミリアンが帰還。新たに船乗りとなる彼を、ヴァランティーヌはずっと支えて行くに違いない。モデルとなったベッポたんは新たな魅力を爆発させ、大人の落ち着きを得たエデは、故郷ジャニナを統治する女王となっていた。平和を見届ける生き証人として、彼女は全ての力を注いで行くことだろう。そのジャニナには、地球の大使秘書補佐官となったアルベールが向かっていた。  フランツの墓参りにやってきたアルベール、墓には既に赤い花束が手向けられていた。5年間、新たな人生を見つけることに必死で故郷に帰ることが無かった彼は、フランツ、フェルナン、そして伯爵、彼らを失った過去に捕らわれることが怖かったと正直に告白した。かつて自分が住んでいた屋敷に飾られていた母・メルセデスの絵、その額の裏に旅の途中に愛するメルセデスに宛てたエドモンの手紙をアルベールは見つける。「待て、如かして希望せよ」、その言葉にアルベールはただただ涙を流しつづけた。  どんな人生を歩むことになろうとも、あの夏のことは忘れない。フランツの墓前で誓ったアルベールに、あのピアノの音色が聴こえた。すぐ近くの教会で想い人が奏でる音色、アルベールはその音色に導かれるように駆け出した。    

アニメ巌窟王完。ゴンゾの新たな映像表現の境地への挑戦は、その大部分が成功を収めたと言って良いのではないかと。いわゆる人のぬくもりが感じられるセルアニメーションは別として、TVアニメーションのCGといえばもうゴンゾの名前が出てこないことは無いけれど、今回巌窟王で異彩を放ったテクスチャリングは、そのゴンゾのCG技術の懐を更に深めたことは間違いありません。  そんな映像面だけでなく、ストーリー面についても上手く纏めたのでは無いかと。原作の大胆な脚色、即ち伯爵の復讐劇であると同時にアルベールの成長物語という二面性を持たせたことは、ドラマ性を更に高める意味では良かったと思う。まぁ、キャラクターの数が多くてなかなか頭が整理できなかったことは否めないけどね(苦笑)
タイトルとURLをコピーしました