【期待大】乱高下する「日本郵船」株価再上昇なるか?

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こんにちは、株式投資家のトムです。

海運株、乱高下してますね~(^^:

海運株は今年の株式市場で注目度が爆上がりした業種の1つです。日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運業大手3社の株価は夏(7月末~8月頭)の第一四半期(Q1)決算において好業績見通し&配当金の大幅増額が発表され急騰しました。以下は国内最大手の日本郵船の直近6カ月の株価推移です。

日本郵船の株価推移(直近6カ月)
日本郵船の株価推移(直近6カ月)

年初からじりじり値を上げてQ1決算があった8月頭に5,000円台から8,000円台に急騰、一旦落ち着いてから更に急騰して9月24日の終値は10,990円と上場来最高値(終値ベース)を付けました。しかしその後急落し10月15日の終値は7,490円と最高値から38%下落しています。

大幅下落の理由は中間配当の権利落ち日(9月28日)があったことに加え、海外投資家の利益確定売りや個人投資家の手仕舞い売りがかさんだためと言われていますが、日本郵船ホルダーとしてはこの乱高下を経て今後どうなるかが気になるところです。私は11月頭に再度高騰する可能性が高いと期待しています。11月頭(おそらく11月4日)は第二四半期決算(Q2)の発表が控えていますが、その内容がQ1決算の発表を更に上回る好業績&通期予想の上方修正になると予想しているからです。

今回は上記予想の理由について解説していきます。

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日本郵船の企業概要とQ1決算の振り返り

理由に触れる前に日本郵船の企業概要について確認しましょう。日本郵船は日本の海運業の一翼を担う大企業で、主な特徴は以下の通りです(ウィキペディアより引用)。

  • 海運業の国内最大手(世界2位)である
  • 三菱財閥系の源流をなす名門企業である
  • 2021年度3月期の連結売上高は1兆6084億円(1兆円企業)
  • 世界52ヵ国に拠点を持つグローバル企業

そして日本郵船の事業内容(事業セグメント)は以下の通りです(日本郵船の公式サイトより)

  • 定期船事業(コンテナ船/ターミナル事業)
  • 航空運送事業(国際航空貨物運送)
  • 物流事業(航空・海上貨物取扱、ロジスティクス)
  • 不定期専用船事業(自動車輸送、ドライバルク輸送、エネルギー輸送)
  • 不動産業/その他事業

繰り返しになりますが私は11月に控えるQ2決算発表でQ1の発表を更に上回る好業績&通期予想の上方修正があると踏んでますので、株価急騰の要因となったQ1決算の内容をまずは確認してみましょう。以下はQ1の実績です。

日本郵船 2022年3月期 第一四半期決算(全体)
日本郵船 2022年3月期 第一四半期決算(全体) 引用元:https://www.nyk.com/ir/library/highlights/2021/__icsFiles/afieldfile/2021/08/03/210804_tanshin_jp.pdf

売上高の40%増もすごいですが、何といっても営業利益が前年同期から約5倍、経常利益は8倍と爆発的に伸びました。これだけの好決算であれば株価の高騰は頷けます。また予想配当金についても前期の200円から今期は700円と大幅な増配を発表しました。この点も株価高騰の要因です。

これほどの好業績となった主な理由は、世界がコロナ渦から通常の生活に戻りつつあるなかでモノへの需要や経済活動が急速に回復していることが挙げられます。これらは即ち運送需要の爆増に繋がり、一方で輸送力はすぐには上がらない(船は簡単に作れない)ため運賃の急上昇を招きました。輸送量と運賃は海運業の収入の要ですから、コロナ渦からの回復がQ1実績を押し上げたことは間違いありません。

次に、先ほど挙げた事業セグメント別のQ1実績を見てみましょう。

日本郵船 2022年3月期 第一四半期決算(事業セグメント別) 引用元:https://www.nyk.com/ir/library/highlights/2021/__icsFiles/afieldfile/2021/08/03/210804_tanshin_jp.pdf

「その他事業」を除き、売上・経常利益ともに各事業セグメントで前年同期から大きく伸長しています。特に定期船事業の経常利益の爆発的な伸びと、不定期専用船事業の売上増・利益改善が目立ちます。

ちなみに定期船事業の売上高より経常利益の額が大きい理由は、定期船のコンテナ事業について海運大手3社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)が立ち上げた合弁会社のオーシャンネットワークエクスプレス(ONE)社が取り扱っており、ONE社の利益を持ち株分だけ(郵船38%、三井と川崎が31%ずつ)営業外収益に計上しているためです。

続いてQ1決算において発表された、Q2業績予想と通期業績予想を確認しましょう。

日本郵船 2022年3月期決算 Q2&通期業績見通し
日本郵船 2022年3月期決算 Q2&通期業績見通し 引用元:https://www.nyk.com/ir/library/highlights/2021/__icsFiles/afieldfile/2021/08/03/210804_tanshin_jp.pdf

上の表は「第二四半期連結累計」つまりは上期(2022年4~9月)の予想となります。これを見ると前回予想からおおむね2割程度の利益増を見込んでいるようです。そして上期の営業利益予想が1000億円なのに対して通期は1500億、経常利益も上期3400億円に対して通期は5000億円となっており、利益が上期に偏重した通期予想になっていることが分かります。これはつまり、下期の業績予想をかなり保守的に見ていることの裏返しでもあります。

ここまでQ1の決算発表の内容を確認してきましたが、Q2決算で何故上振れや上方修正が期待できるかを次に解説していきます。

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海運業の市況とQ2好決算予想のポイント

以下の記事では海運業のビジネスモデルを分かり易く解説しているこちらのサイトの内容を参考にさせて頂いています。海運業での収益を左右するポイントとして以下の3点が挙げられています。

  • ① 世界の貨物運輸需給動向の影響
  • ② 為替レートの影響
  • ③ 原油価格、人件費の影響

① 世界の貨物運輸需給動向の影響

まず①についてですが運輸需要が上がると運賃も上がります。この運賃の動きが分かる指数が世界にはいくつか存在します。日本郵船のサイトで各事業の市況や指数をグラフで公開していますのでそちらを確認しましょう。

定期船運賃市況(CCFI)
定期船運賃市況(CCFI) 出典元:https://www.nyk.com/ir/financial/shipping/

定期船、特にコンテナ船の運賃の動きを示す指数がCCFI(上海航運交易所が算出・公表する中国出しコンテナを対象とした運賃指数)で、上記は主要な航路におけるCCFIの推移を示したグラフになります。2021年に入り指数が急騰していることが分かります。ちなみに右の直近12カ月のグラフの期間は9月までで、最新(10/15)の指数を調べたところ9月からほぼ変わらず高止まりとなっています。

ドライバルク市況
ドライバルク市況

ドライバルク船の市況についても、今年に入って急激な伸びを示しています。(なおこちらは最新の指数は調べられませんでした)

不定期船・タンカー運賃指標の推移(BDI/WS)
不定期船・タンカー運賃指標の推移(BDI/WS)

BDIは「バルチック海運指数」(Baltic Dry Index)は外航不定期船(外航ばら積み船)の運賃の総合指数、WS(ワールドスケール)は世界で最も一般的に使用されているタンカーの運賃指標(基準運賃)です。BDIは今年に急騰、WSは横ばいですが9月に少し上昇しています。

BDIについては最新の情報が得られたので下に掲載しておきます。10月2週目に下げていますが、おおむね5000ポイント前後をキープしています。

BDIの最新状況(2021/10/15時点) 
BDIの最新状況(2021/10/15時点) 引用元:https://www.bloomberg.co.jp/quote/BDIY

上記で確認した市況や指数の中でQ2に大きく下げたものはなく、逆にQ2の業績予想が発表された8月以降に上昇している指数は多くあります(BDIやドライバルク市況)。従って「①世界の貨物運輸需要」はQ2も旺盛であり、Q2の業績を押し上げる要素の1つになりえます。

また下期についても大きく需要が落ちることは考えにくいと私は予想しています。世界のコロナ渦からの回復が地域によってまちまちであることや、先進国でインフレ傾向(=モノ需要が高い状態)が続くと予想されていること等が理由です。

(10/18 追記)Q2以降の業績予想における不定期船事業の市況の前提条件がこちらのQ1決算発表資料にありましたので補足します。

Q2以降の業績予想の市況予想 引用元:https://www.nyk.com/ir/library/result/2021/__icsFiles/afieldfile/2021/08/04/210804_ppt_jp_1.pdf

これを見ると、予想の上ではBDIもドライバルク市況の指数もQ2はQ1と同程度、下期は市況の落ち着きと共に下落すると見ています。しかし実際にはBDIもドライバルク市況もQ2はQ1以上の指数となっていますので、Q2の業績の上振れに繋がるとみて間違いないと考えます。

② 為替レートの影響

次に②為替レートの影響です。直近のドル円相場を確認しましょう。

米ドル/円 為替相場推移
米ドル/円 為替相場推移 引用元:https://www.bk.mufg.jp/tameru/gaika/realtime/chart.html

最新の相場は1米ドル114円23~25銭で、直近1カ月で急激な円安ドル高が進んでいます。

外航海運業での主要な取引通貨が米ドルであるため、一般に日本の外航海運会社の収入については米ドルの割合が非常に高い(近年ではユーロ取引も増加)

第1回:海運業の特有のビジネスと会計の概要
https://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/shipping/2009-10-05-01.html

とありますので、円安ドル高は日本郵船のような外航をメインとする海運企業にとっては利益増の要素となります。

ここで先ほど掲載した日本郵船のQ2以降の業績予想において、為替レートがどんな前提になっているのかを見てみましょう。↓の赤枠にご注目下さい。

(再掲)日本郵船 2022年3月期決算 Q2&通期業績見通し 引用元:https://www.nyk.com/ir/library/highlights/2021/__icsFiles/afieldfile/2021/08/03/210804_tanshin_jp.pdf

なんとQ2以降の予想為替レートを1米ドル105円と見ています。通期で1米ドル106.20円となっているのは(ここには書いてないですが)Q1実績での為替レートが1ドル109円80銭で計算されており、Q2以降の予想為替レート105円と合わせて年で平均すると106.20円になります。

通期予想の経常利益は1ドル106.20円の前提で5000億円と見ているのですが、これを現在の114.25円に修正すると、5000億円x(114.25 / 106.20) = 5379億円になります。実際の取引は米ドルだけではないのでこのような単純計算にはなりませんが、現在の円安ドル高傾向が数十~数百億円単位での利益増に貢献することは間違いありません。

(10/18 追記)Q1決算発表資料の中に「為替レート :1円の円安で約40.6億円/年の増益」との記載がありました。現在の円安ドル高が大幅な増益に貢献することが確認できました。

③ 原油価格、人件費の影響

最後の③ですが人件費の影響を測ることは困難ですので原油価格に絞って検討します。下のグラフは原油価格の指標としてよく用いられる「WTI原油先物価格」のグラフです。

WTI原油先物価格
WTI原油先物価格 引用元:https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/data/clc1.html

グラフを観て分かる通り、直近1カ月で原油価格が急激に上昇しています(最近ガソリン価格も高騰してますね)。原油価格の高騰は海運ビジネスにとっては燃料コスト増=利益減に繋がります。先ほど再掲したQ2&通期予想の前提条件の中に「燃料油価格」があり、原油価格が業績予想に影響を与えることは確かです。

但し海運業の運賃には燃料割増料(バンカーサーチャージ)を上乗せする仕組みがあり、原油価格高騰による利益減のリスクをある程度ヘッジできます(こちらのサイトの「① 運送契約と運賃決定方法」を参照)。

(10/18 追記)Q1決算発表資料の中に「燃料油価格 :$10/MTの燃料油価格下落で約4.6億円/年の増益」との記載がありました。やはり原油高が減益に働く可能性は高そうです。但しQ2の燃料油価格の予想は$499.00となっており、Q1実績の$441.92から大きく上昇する前提となっています。従って現在の原油高騰が決算予想に織り込み済みの可能性もあります。

Q2実績の上振れ、通期予想の上方修正の可能性は高い

海運業の国内最大手である日本郵船について、11月に控えるQ2決算と通期予想を以下の3つのポイントを中心に検討してみました。

  • ① 世界の貨物運輸需給動向の影響
  • ② 為替レートの影響
  • ③ 原油価格の影響

①については主に市況や指数の情報からQ2の需要は旺盛であり好決算に繋がること、②の為替レートの影響については直近の円安ドル高が利益増に直結すること、③の原油価格の影響については直近の原油価格の高騰がマイナスの要素になりますが燃料割増料である程度ヘッジできること、以上のことからQ2の好決算が期待できると私は考えています。

また通期予想についても上方修正が期待できます。①は世界的に大きく需要が落ちる可能性は低いと考えられますし、②についてもQ1に発表された通期予想の為替レートより実際のレートが大きく円安ドル高方向に振れているからです。また上述したようにQ1決算発表時点で下期の業績予想をかなり保守的に見ている点も、通期予想の上方修正の可能性を高める要素になるでしょう。

更に配当金の更なる増配にも期待できます。こちらの記事によればQ1決算の場で長澤社長が「配当性向25%では十分に(株主)還元できているとは言えない。配当性向の引き上げや、自己株買いを組み合わせ、総還元性向で考えていく必要がある」と発言されたらしいので、増益は即ち増配に繋がると見るのが妥当と考えます。

これらの予想が全て当たった場合は日本郵船に対する投資家心理が爆上がりし、株価が再び上昇することは大いに期待できますし、最高値の更新にも期待が持てると考えます。

以上、日本郵船の好決算と株価の再上昇への期待について解説しました。今回の記事は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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