【ロシアと為替に翻弄される運命?】日本たばこ産業(JT) 2022年Q1決算発表

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JTの22年1〜3月期、純利益9.1%増 通期予想据え置き(日経)

JT、ロシア事業の売却検討 安定的な事業継続に「著しい支障」(ロイター)

4月28日(金)の引け後に高配当株の代表銘柄である日本たばこ産業(以下、JT)の2022年第一四半期(Q1)の決算が発表されました。日経の記事から要点をまとめると

  • Q1の売上収益は前年同期比6.2%増の5815億500万円
  • Q1の営業利益は同11.4%増の1783億6800万円
  • Q1の経常利益は同11.7%増の1746億9900万円
  • Q1の純利益は同9.1%増の1241億1000万円
  • 通期予想に対するQ1の進捗率は営業利益で33.4%と過去5年の平均(30.1%)を上回る
  • 2022年12月期の売上高にあたる売上収益は前期比0.4%減の2兆3150億、営業利益は同7%増の5340億円となる見通し。いずれも従来予想を据え置いた。

ということで、数字だけを見れば良好な決算と言えそうです。但しロイターの記事を見ると、ロシア・ウクライナ情勢がJTの経営に暗い影を落としていることも読み取れます。ここで公開されているQ1決算資料の内容を中心に、JTの経営状況や見通しについて改めて確認してみましょう。

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事業は好調だがロシアと為替の影響が大きい

まず決算説明資料の最初に、以下の通りロシア情勢の影響が説明されました。

JT FY2022Q1 ロシア・ウクライナ情勢の影響
JT FY2022Q1 ロシアウクライナ情勢の影響

この資料で重要だと感じる点は以下の通りです。

  • 執筆時点(2022/5/1)で、JTはロシアでの事業を継続している(新規投資は無し)
  • JTにおいてロシア市場の存在感は大きい(売上収益及び調整後営業利益の約8%、約15%がロシア)
  • しかし経営からロシア事業の分離=ロシア市場からの撤退を検討中
  • (資料の一番下に小さく記載されているが)為替の影響も大きく、原則として円安は利益を押し上げる
  • ロシア・ウクライナ情勢の不確実性のため、2022年の通期見通しは今回発表せず

というところでしょうか。分かってはいたことですが、ロシア・ウクライナ情勢の影響は大きいですね。そして昨今の円安基調が経営に与える影響もありそうです。決算資料からそれを確認してみましょう(↓の資料はクリックしたら拡大します)

JT FY2022Q1決算(全体)
JT FY2022Q1決算(全体)
JT FY2022Q1決算(各市場サマリー)
JT FY2022Q1決算(各市場サマリー)

左側が今回の決算の全体を表した資料です。売上も利益も前年同期比で増収・増益ですが、資料の右側に「為替一定ベース調整後営業利益:前年同期比+4.5%」と記載があります。要は為替の影響を除いた後の営業利益という意味ですが、これが決算発表の数字より小さくなっていることから、決算上の売上や利益は為替の影響、つまり円安によって更に上積みされたことになります。

上記の右側の資料では、JTが事業を展開する各国での概況が記載されています。日本はHTS≒加熱式タバコ(PloomX)が徐々に増加、それ以外の国はWinstonなどのブランド品が好調のようです。で、イタリアやスペインの通貨はユーロ、UKはポンドですが、これらの通貨に対しても最近は円安傾向です。更にはロシアのルーブルも紛争開始直後は大きく円高でしたが最近は円安傾向に振れています。事業が好調であることに加え昨今の円安傾向が利益を押し上げていることが分かります。

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株価は紛争による下落から徐々に持ち直し ロシア事業の行方がカギか

最後にJTの株価の推移を見てみましょう。

JT 株価(2022年4月28日引け時点)
JT 株価(2022年4月28日引け時点)

今回の決算までの動きとしては、ロシア・ウクライナ紛争が勃発した2月下旬に株価が大きく下がりました。しかしそこから今回の決算まで徐々に値を戻しています。そんな中で今回の発表による市場の反応が気になりますが、私は決算内容にそれほど大きなインパクトは無かったため、株価も小幅な反応に留まると予想しています。

JTの株価が大きく動く可能性のあるトリガーは、やはり決算資料でも触れられていたロシア事業の分離でしょう。売上、利益の約10%を占めてますからね。他にはJTのウクライナ工場がロシアの攻撃を受けたといった衝撃的なニュースでしょうか(もちろんそのような事は全く望んでいません)。そして各国が金融引き締めを強める中で、相変わらず金融緩和を続ける日銀のスタンスが変わりそうにないことから、各国通貨に対する円安傾向が今後も続くことが想定されます。これもJTの株価に影響を与えるかもしれません。

JTは昨年2月にコア事業であるたばこ事業の本社機能を東京からスイスのジュネーブに移転し、グローバル企業としての存在感を高めています。そしてグローバル企業が故に、昨今のロシア・ウクライナ情勢や為替の影響を大きく受けている、そんな印象があります。

私はJT株を「高配当をもたらしてくれるマネーマシン」と位置付けています。ですので株価が下がったら度々ナンピン買いを入れています。ロシア事業の行方や為替の影響を、今後も注視していきたいと思います。

今回の記事は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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