【やっぱり今年度も最高益】商船三井 2022年度第2四半期決算を発表

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こんにちは、投資家のトムです。10/31の12時に海運大手の商船三井の2023年3月期(2022年度)第2四半期決算が発表されました。そのニュースを見てみます。

商船三井、今期経常を一転11%増益に上方修正・最高益、配当も50円増額 (株探)

23年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結経常利益は前年同期比2.2倍の5997億円に急拡大し、従来予想の5000億円を上回って着地。併せて、通期の同利益を従来予想の7100億円→8000億円(前期は7217億円)に12.7%上方修正し、一転して10.8%増益を見込み、2期連続で過去最高益を更新する見通しとなった。

会社側が発表した上期実績と通期計画に基づいて、当社が試算した10-3月期(下期)の連結経常利益は前年同期比55.5%減の2002億円に大きく落ち込む計算になる。

業績好調に伴い、今期の年間配当を従来計画の500円→550円(前期は1→3の株式分割前で1200円)に増額修正した。

直近3ヵ月の実績である7-9月期(2Q)の連結経常利益は前年同期比88.3%増の3156億円に拡大し、売上営業利益率は前年同期の4.0%→7.3%に大幅改善した。

https://kabutan.jp/news/?b=k202210310024

通期見通しの上方修正(昨年から減益→増益に)&50円の配当増額となりました。ある程度予想されていたとは言え、ホルダーとしては嬉しいですね(^^。決算発表を受けて株価は上昇し、終値は前日から1.59%高い2,951円で引けました。

商船三井 株価(2022/10/31)
商船三井 株価(2022/10/31)

ここからはいつものように、決算説明資料(決算短信及びプレゼンテーション)をベースに内容を確認していきましょう。

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爆益のコンテナ船事業に牽引され、大幅な増収増益を達成

まずは上期累計の決算を確認しましょう。左側が決算の概要、右側がセグメント別の資料です(画像をクリックしたら拡大します)

商船三井 2022年度上期 決算概要
商船三井 2022年度上期 決算概要
商船三井 2022年度上期 決算 セグメント別
商船三井 2022年度上期 決算 セグメント別

上期累計の売上高は8213億円(前年度比2242億円増)、経常利益は5997億円(同 3279億円増)です。上期だけで約6000億円も稼いでいうのはスゴイですね。もちろん同社では過去最高益となります。そしてセグメント別資料を見ると、第1四半期までと同じくコンテナ船事業の経常利益4947億円という爆益を上げています。このコンテナ船の利益が全体の80%を占めており、会社全体の損益はコンテナ船の爆益に牽引されています。しかし昨年度の本決算時の投稿を見直すと、昨年度の利益のうちコンテナ船事業は9割を占めていました。そこからやや割合が下がったことからコンテナ船依存がやや落ち着いたと言え、私はこの点はポジティブに捉えたいと思います。

商船三井のコンテナ船事業の利益は同社と日本郵船、川崎汽船の3社の合弁会社であるオーシャンネットワークエクスプレス(以下、ONE)社の損益を3社で持ち株比率に応じて分け合う形で計上されます(郵船が38%、商船三井と川崎が31%ずつ)。同時に公開されたONE社の資料を見ると、今期はまだまだ貨物需要が旺盛だった事とサプライチェーン混乱継続による運賃の高騰が続いた事が、コンテナ船事業の大きな利益に繋がったようです。

ONE社 2022年度上期決算概要の要点(抜粋)

コンテナ船以外の事業も見てみると、ドライバルク事業は前年度上期から202億円、エネルギー事業が102億のプラスと、以前の決算では減益となっていたセグメントもありましたが、全セグメントで着実に利益が上がっている点は良いですね。

また1点見逃せないのは為替の影響です。

>売上高 :前年上期比 2,242億円の増収。ドライバルク、自動車船事業の堅調および為替影響等による。

と、決算総括にも記載されています。従来の予想レートは1米ドル125円でしたが第2四半期に円安が進み、上期の平均レートは130.98円と5円以上の円安となりました。海運は円安が増益方向に働きますので、この点も売上・利益の増加に貢献したようです。

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通期利益を減益から一転増益に修正も、コンテナ船に陰りが見える

先のニュースにもありました通り、今回の決算発表では今期(2022年度)の損益見通しが上方修正され、従来は昨年度から減益だったのが一転して増益予想となりました。こちらも今回の決算発表資料に詳細がありますので見てみましょう。

商船三井 2022年度通期見通し(全体)
商船三井 2022年度通期見通し(全体)
商船三井 2022年度通期見通し(セグメント別)
商船三井 2022年度通期見通し(セグメント別)

左が全体の資料となります。売上は従来見通しから1300億円増加し1兆6000億円を見込んでます。また経常利益は従来見通しから900億円増加し8000億円となっています。昨年度の経常利益は7200億円程度でしたので、10%ほど上回る見通しとなりました。

しかし先のニュース記事にもありましたが、下期の予想については注目せざるを得ません。売上は上期の水準をほぼ維持する7786億円ですが、経常利益は前回見通しから約100億円の減益となる2100億円です。上期の経常利益は5997億円ですので、下期の利益は上期の3分の1に落ち込む予想となります。結局、通期見通しの上方修正の中身は上期が予想以上に爆益だったことによるもので、下期はかなり厳しい見通しであることが読み取れます。

右のセグメント別資料を見ると、ドライバルク事業とエネルギー事業は前回見通しから横ばい、もしくは増益となっていますが、コンテナ船事業は前回見通しから267億円と大きな減益です。ここでONE社から公表された資料の通期見通し(↓資料)を見てみましょう。

ONE社 2022年度通期見通し
ONE社 2022年度通期見通し

2022年度の下期の予想を見ると売上は上期の約6割に、税引き後損益は約3分の1に減少となっており、先の商船三井の減益予想とリンクしていることが分かります。利益減少の理由は「需要減退による運賃市況の悪化」とあります。ここでコンテナ船の運賃に強くリンクするCCFI(中国輸出コンテナ運賃指数)の推移を見てみましょう。

CCFI (2022/10/28時点) 引用元:https://en.sse.net.cn/indices/ccfinew.jsp

この推移をみると直近で大きく指数が落ち込んでおり、(上記画像だとわかりにくいですが)2021年4月の水準に下がっています。これが需要減退によるものだとONE社は予想しているわけですが、確かに昨今の世界的なインフレや金利の高騰による景気悪化の懸念などを踏まえるとV字回復を期待することは難しいでしょう。残念ながら今回が爆益決算のピークとなりそうです。あとは実際の需要の減退がどの程度の大きさで、この指数がここから更にどの角度で落ち込むのかがカギになります。私の個人的な希望を言えば世間が言うほど景気は悪くならず、この水準を維持してもらいたいところですが...

続いて為替レートについて触れますと、通期見通しの前提としている下期の為替レートは1米ドル135円となっています。執筆時点(2022/10/31)のレートは1米ドル147~148円程度で推移しており、商船三井の想定と10円以上の差があります。今後どうなるかは読めませんが、米国の政策金利が年内は上昇し続ける公算が高い事を踏まえると、政府の介入が無い限りは急に円高方向に振れる可能性は小さいと思われます。今回の決算資料には為替レートの感応度の数値も記載されており(↓)1円の円安で42億円の増益になります。10円以上の差がつき続けるのであれば数百億円程度の増益になり、需要の減退をある程度カバーできるかもしれません。

商船三井 為替レートの感応度

なお先のニュースにあった配当の増額について、↓の通り期末配当が200円→250円に増額予定となりました。中間配当は従来の300円から変更ありません。

商船三井 2022年度配当予想

LNG船関連の取り組みが目立つ コンテナ船依存からの脱却が狙いか

以上の通り、商船三井の上期決算と通期の業績見通しについて確認してきました。

最後に私が個人的に気になっている点を述べてみます。商船三井のプレスリリース一覧を見ると、以下に代表されるようにLNG船に関するリリースが目立つ印象です。

LNGは石炭や石油に比べて環境負荷が少なく世界的に利用拡大が進んでおり、日本も大量のLNGを世界各国から輸入しています(参考資料:2022年9月貿易概要)。昨年まで最大の輸出国だったロシアがウクライナ紛争に踏み切り輸出を抑えてしまっていますが、商船三井の経営方針の一つにLNG輸送の強化があるように思います。(なお昨年度の本決算時点で経営陣はM&Aの強化を挙げておりましたが、現時点で目立った動きは無いようです)

LNG船のビジネスは「エネルギー事業」セグメントに属します。商船三井をはじめとする海運大手3社はコロナの流行からこの2022年度上期まではコンテナ船事業の爆益に大きくけん引されてきましたが、もう実ビジネスにおいてコンテナ船に頼っている場合ではなさそうな雰囲気を私は感じます。しかし船のビジネスは何をするにも多大な時間を要しますので、すぐに成果を出せるものではない点も頭に入れておくべきです。これから海運大手は需要の減退により、簡単ではない状況に直面しそうです。

今回の記事は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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