【最高益上乗せ&増配も今回までか】日本郵船 2023年度第2四半期決算発表

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郵船、今期経常を7%上方修正・最高益予想を上乗せ(株探)

23年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結経常利益は前年同期比92.7%増の7653億円に拡大した。併せて、通期の同利益を従来予想の1兆400億円→1兆1100億円(前期は1兆31億円)に6.7%上方修正し、増益率が3.7%増→10.7%増に拡大し、従来の3期連続での過去最高益予想をさらに上乗せした。

会社側が発表した上期実績と通期計画に基づいて、当社が試算した10-3月期(下期)の連結経常利益は前年同期比43.1%減の3446億円に落ち込む計算になる。

業績好調に伴い、今期の年間配当を従来計画の1145円→1210円(前期は1→3の株式分割前で1450円)に増額修正した。

直近3ヵ月の実績である7-9月期(2Q)の連結経常利益は前年同期比59.1%増の3876億円に拡大したが、売上営業利益率は前年同期の11.9%→10.7%に低下した。

https://kabutan.jp/news/?b=k202211040014

こんにちは、トムです。私の大好きな海運企業の最大手である日本郵船の2023年第2四半期決算が発表されました。先日の商船三井の発表内容を踏まえると好決算が予想されましたが、予想通り最高益予想の更なる上乗せと中間&期末配当の増額が発表されました。ホルダーとしてはとてもポジティブに受け止められる結果で嬉しいです(^^

しかしながら決算発表のあった11/4に株価は大きく下落し、発表があった12時を過ぎた後場で更に値を下げる展開となりました。↓は直近1週間の株価推移のグラフです。

日本郵船 株価推移 (2022/11/4)
日本郵船 株価推移 (2022/11/4)

発表当日に大きく下落した理由の1つは、先の株探の記事に記載された通り下期の利益が前年から減益となる、つまりはコロナ渦で大きく利益を伸ばしてきた海運業の業績がピークアウトすると見込まれている点でしょう。そして大手海運企業の決算発表が一通り終えたことによる材料出尽くし感も影響したと考えられます。商船三井の決算発表日(10/31)とその翌日には株価を上げていましたが、4日にその反動となって表れた形です。

この下落は今後も続いてしまうのでしょうか。それを考察するために、以降ではいつものように郵船の決算発表資料をベースに決算内容を確認してみます。

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上期はコンテナ船事業に加えて好調な不定期専用船の存在感が増す

今回発表された決算(実績)は2023年3月期上期(2022/4~9月の累積)となります。決算サマリー(全体と事業セグメント毎)を確認してみます。左が全体、真ん中と右がセグメント別の資料です。

決算サマリー(全体)
決算サマリー(全体
決算サマリー(定期船、航空運送)
決算サマリー(定期船、航空運送)
決算サマリー(物流、不定期専用船)
決算サマリー(物流、不定期専用船)

全体資料から売上は前年同期比で3144億円の増収、経常利益は3680億円の増益となる7653億円で、爆発的に売上・利益が増加したことが改めて分かります。その主要因としていつもの定期船(≒コンテナ船)事業の好調さに加えて、不定期専用船が好調だった点が挙げられているのが印象的です。また歴史的な円安が増益に寄与したことも触れられています。配当については後程触れます。

セグメント別資料を見ると、ONE社によるコンテナ船事業が相変わらず好調な定期船事業が2766億円の増益となりました。3680億円の増益の約7割は定期船事業によるものです。しかしそれ以外のセグメントも全て増益となっています。航空運送と物流は前年同期から約3割前後の増益で、不定期専用船は何と2倍以上の717億円の増益です。

これらの実績を表にまとめたものを↓に示します。

決算概要(全体)
決算概要(全体)
決算概要(セグメント別)

セグメント別の資料から、利益全体に対して定期船事業の利益が占める割合は74%となります。定期船事業の割合が80%となっている商船三井と比べると依存度は低く、多角的に事業が好調であるとも言えるので私はその点はポジティブに評価しています。数値的には1194億円と利益全体の15%を挙げている不定期専用船の存在感が大きくなっていると感じます。

今回の決算プレゼン資料の中に、従来は含まれていなかった「利益の増減分析」資料がありましたので↓に示します。

経常損益 増減分析

右側の事業別は先に触れた通りですので右の要因別分析を見ると、定期船と不定期船の好調に加えてやはり為替レートの影響が大きいことが分かります。為替差損益も含めて約840億円の増益ですからね。あと燃料油高がわずかに減益となっていますが、かなりの原油価格の上昇があったにも関わらずこれだけの減益で済んでいるのは特筆すべき点かと思います。

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通期見通しは下期の利益減が目立つ コンテナ船はピークアウトか

次に通期業績の見通しについて確認してみましょう。左が全体、真ん中と右がセグメント別となります(画像をクリックすると拡大します)

通期予想(全体)
通期予想サマリー(全体)
通期予想(定期船、航空
通期予想サマリー(定期船、航空運送)
通期予想(物流、不定期専用船)
通期予想サマリー(物流、不定期専用船)

上記資料では前回の第1四半期決算時の通期見通しとの差も表現されています。売上は2000億円上方修正し2兆7000億円、経常利益は700億円上方修正し1兆1100億円の予想となりました。セグメント別を見るとやはり定期船事業が450億円と大きな上方修正となっています。航空運送は微減、物流は微増で、不定期専用船が260億円の上方修正となりました。通期で見ればやはり不定期専用船ビジネスの存在感が増している印象を受けます。

次に通期予想をまとめた表を確認しましょう。

通期予想サマリー(全体)
通期予想(全体)
通期予想サマリー(セグメント別)
通期予想(セグメント別)

左の全体資料で注目すべきは下期の売上と利益予想です。下期売上見込みは1兆3342億円で上期とほぼ同水準になっていますが、経常利益は3447億円となんと上期から半分以下。ちなみに前年の下期の経常利益は6059億円でしたので、これも約4割減という厳しい予想となっています。

また下期の予想為替レートは1米ドル143円に設定されています。執筆時点(11/6)のレートは1米ドル146円~147円で推移していますので、円高リスクをそれほど見込んではいません。前回第1四半期決算の記事を見ると、その時の下期想定レートは1米ドル135円でしたので今回かなり踏み込んだ予想に変えて来た印象です。為替レートの感応度は1円の円安で35億円の増益になりますので、想定以上の円高になった場合に減益になる可能性があります。

セグメント別資料を見ると、利益減の主な要因はやはり定期船(=コンテナ船)事業の落ち込みで、下期は2480億円と上期の5670億円から何と3190億円のマイナスです。先の資料に記載されていますが下期は輸送需要の減退、港湾混雑緩和による需給の正常化などにより運賃の減少が見込まれています。ということで、やはり近年の異常とも言えた海運の好況は今年度の下期にピークアウト=大きく正常化することが避けられない見通しです。

定期船以外のセグメントについても下期は上期と比較して3~5割程度の利益減が見込まれています。存在感を増していると評価した不定期専用船も下期には大きく落ち込むことが見込まれています。結局のところ通期見通しの上方修正は上期の好調さで可能になった事であり、下期はどのセグメントも厳しさを増すということです。

ここで最新のCCFIの数字を確認しておきましょう。

CCFI (2022/11/4時点) 引用元:https://en.sse.net.cn/indices/ccfinew.jsp

1週間前の10/28には1862ポイントでしたのでCCFIの下落傾向は続いています。これを踏まえてもやはりコンテナ船事業の落ち込みは避けられそうにないですね。

なお配当金についても今回増額が発表されてました。中間配当は株式分割前基準で1,000円→1,050円と50円の増額、期末配当は株式分割後基準で145円→160円にそれぞれ増配となりました。年度では1,530円(株式分割前基準)/510円(株式分割後基準)となります。執筆時点の株価を基準とした配当利回りは19.89%と相変わらずな超高配当です。ただ、ここ2年くらい海運市況の好調さで増額に増額を重ねてきましたが、上述の通り下期の落ち込みが避けられないことから今回までで増額打ち止めとなる可能性は高そうですね。

コンテナ船依存への脱却への取り組みに注目

以上のように、近年大きな活況を示してきた海運にもピークアウトが避けられない状況です。ここで求められるのは、輸送の需給が正常化した時にも利益を出せる企業体質に変貌できるかだと私は思います。もっと言えば各国の中央銀行が利上げに走る中で世界的なリセッションに陥る可能性もあり、その状況でも利益確保できるのが理想です。

その観点で、決算プレゼン資料から以下2つのスライドが目を引きました。

日本郵船 取り組み(1)
日本郵船 取り組み(1)
日本郵船 取り組み(2)
日本郵船 取り組み(2)

左のスライドは「運賃安定型事業」の利益が拡大してますよ、というアピールです。運賃「不安定」型事業の代表例はコンテナ船でしょうが、要はコロナ渦のような特殊要因で運賃が大きく跳ね上がるボラティリティの高いビジネスに依存せず、堅調な輸送需要が見込める分野でしっかりと利益を確保していますよ、という意味です。これはコンテナ船事業のピークアウトが確実な状況において、株主として日本郵船に強く求めたい内容の1つですので、今後も決算資料でしっかりと確認していきたいと思います。

次に右のスライドの右下に記載されたSEP船について、最近ニュース記事にも掲載されていました。

新造船なら初…圧倒的に不足「SEP船」、日本郵船が運航へ(yahoo)

日本郵船は洋上風力発電設備の設置や保守点検作業をする自航式の自己昇降式作業台船を2026年にも保有・運航することを決めた。新造船なら日本の海運会社として初の発注となる。大型風車の設置に対応する最大揚重能力1000トン以上のクレーンを想定。日本船籍船とし、今後建設が本格化する秋田県沖などでの洋上風力発電の関連事業に従事する。

競合企業である商船三井も洋上風力発電の関連事業を強化していますが、日本郵船が従来持っている船舶運航という専門領域を活かして洋上風力発電の関連事業を強化する方針には基本的には好感が持てますが、どれだけのビジネス規模になりそうなのかが正直全く読めません。素人の考えですが、洋上風力発電そのものをビジネスとしている電源開発の決算資料などを見ると、今後洋上風力発電の発電量はこれからかなりのペースで伸びていきそうですので、それなりのビジネスになると期待したいと思います。

今回の記事は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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