【視界良好】丸紅、伊藤忠商事、住友商事が2023年3月期 第2四半期決算を発表

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丸紅、今期最終を一転20%増益に上方修正・最高益、配当も15円増額(株探)

23年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結最終利益は前年同期比52.9%増の3146億円に拡大した。併せて、通期の同利益を従来予想の4000億円→5100億円(前期は4243億円)に27.5%上方修正し、一転して20.2%増益を見込み、2期連続で過去最高益を更新する見通しとなった。

伊藤忠、7-9月期(2Q)最終は8%増益(株探)

23年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結最終利益は前年同期比3.5%減の4830億円に減ったが、通期計画の8000億円に対する進捗率は60.4%となり、5年平均の58.7%とほぼ同水準だった。

住友商、今期最終を一転19%増益に上方修正・最高益、配当も25円増額(株探)

23年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結最終利益は前年同期比45.3%増の3502億円に拡大した。併せて、通期の同利益を従来予想の3700億円→5500億円(前期は4636億円)に48.6%上方修正し、一転して18.6%増益を見込み、2期連続で過去最高益を更新する見通しとなった。

こんにちは、トムです。11月4日に五大商社のうち丸紅、伊藤忠商事、住友商事の三社が2023年3月期の第2四半期決算を発表しました。上記のニュースの通り3社とも好調と言える内容でした。特に丸紅と住友商事の2社は、通期見通しを減益から増益に上方修正し、配当も増額されました。なお伊藤忠商事については10月4日に以下の記事の通り通期見通しの上方修正&増配が発表済みでした。

伊藤忠、今期最終を14%上方修正、配当も10円増額(株探)

私は五大商社株をそれぞれ100株前後保有しており従来から商社ビジネスに興味はありましたが、これまであまり中身を見たことはありませんでした(ぶっちゃけ素人です笑)。ということで素人ではありますが本記事ではこれら3社の決算について、具体的にどのビジネスが良かったのかを見ていきたいと思います。商社のビジネス領域は大きく「資源分野(金属資源や石油・石炭等のエネルギー資源)」と「非資源分野(資源分野以外のもの)」に分けられておりますのでその観点を中心に見ていきます。

※一般的に資源分野は景気・資源価格に非常に敏感な領域で、非資源分野は資源分野ほど景気への感応度は高くないです。

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丸紅・・・アグリ事業に強み 資源価格高騰の恩恵を受ける

まずは丸紅です。丸紅の決算プレゼンテーション資料から↓に純利益の推移グラフ(左側)と、セグメント別損益状況(右側)を抜粋してみます(画像はクリックで拡大します)

丸紅 利益の推移
丸紅 セグメント別損益

左の実態純利益を見ると、資源分野の利益が1210億円、非資源分野が1,940億円で、ざっくり1対2の割合です。通期見通しも概ねその割合となっています。右のセグメント別を見ると最も高い利益を稼いでいるのが金属で、続いてアグリ事業(肥料、農薬、種子等の農業資材の販売事業)、エネルギー、電力、金融、航空・船舶と続きます。

大手商社と言えば従来から世界各地で鉱山開発や多種多様な金属の販売等に取り組んでおり伝統的に金属セグメントの利益が大きい印象ですが、丸紅はその通りでセグメント別では断トツに高い利益を誇り、利益の約4分の1と占めています。ちなみに石炭の採掘で得る利益は(エネルギーではなく)金属セグメントに含まれるようで、近年の石炭価格の暴騰の恩恵を受けたと思われます。

次に、近年は原油、LNG価格も高騰しているためエネルギーセグメントの売上はどの商社も高いのかと思いましたが、丸紅はそれほどでも無い印象です。一方でアグリ事業で高い利益を出しています。おそらくは世界的な穀物価格の上昇が寄与したと思われます。食料系の強さは丸紅の一つの特徴と言えるのではないでしょうか。また社会産業と区分される金融や航空船舶でも100億円以上の利益を出しています。

資源高の恩恵を受け、金属とエネルギー及びアグリ事業で大きな利益を上げました。その一方であまり資源の価格が関係しない金融や電力、航空等でも大きな利益を上げており、非資源分野の強化が進んでいる印象です。

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伊藤忠・・・非資源分野全般に強さを発揮

続いて伊藤忠商事です。決算プレゼンテーション資料から↓に上期決算と通期見通しの全体資料(左側)、セグメント別損益状況(右側)を抜粋してみます(画像はクリックで拡大します)

伊藤忠商事 上期実績と通期見通し
伊藤忠商事 セグメント別利益

先のニュース記事にもあった通り、上期に過去最高益を達成し、通期でも過去最高の売上と利益を見込んでいます。右のセグメント別資料を見ると丸紅と同じく金属セグメントがダントツの利益1347億円を誇り、全利益の約4分の1を占めています。続いて機械、住生活、エネルギー・化学品、食料、情報・金融と続きます。資源分野の金属とエネルギーの合計は約1800億円で、全利益の約4割を占めています。

伊藤忠といえば↓の記事にもあるように、従来から非資源分野に力を入れている印象がありました。

総合商社を志望するなら必ずおさえたい! 企業比較の3つのポイント · en-courage
「なぜ三菱商事ではなく、私たち伊藤忠商事を志望するのですか?」皆さんは、この問いに答えられるでしょうか?就活生に人気の5大総合商社ですが、その違いがわかりづらいという方も多いはず。本記事ではそんな5総合商社を比較とする時に必ず抑えておきたい3つのポイントを解説します!

>非資源分野で最もシェアを持っているのは伊藤忠商事で「非資源ナンバー1商社」戦略に力を入れています。

セグメント別利益を見ると、確かに機械セグメントは上期に700億円の利益をあげており、住生活、食料、情報・金融といった分野でも通期では250~630億円の利益をあげています。我々の生活に最も近いコンビニ(ファミリーマート)事業を含む第8セグメントも上期に195億円の利益です。機械セグメントはコロナ渦からの回復により自動車や建機、航空機の需要が伸びたためと思われますが、非資源分野の各セグメントで通期に数100億~1000億円の利益をあげることができるのは、伊藤忠の戦略が正しく機能している証と言えるのではないでしょうか。

住友商事・・・利益トップは資源(エネルギー) 機械や生活ビジネスが強い

最後に住友商事です。決算プレゼンテーション資料から↓に上期決算の全体資料(左側)、セグメント別損益状況(右側)を抜粋してみます(画像はクリックで拡大します)

住友商事 第2四半期実績(全体)
住友商事 上期実績(全体)
住友商事 第2四半期実績(セグメント別)
住友商事 上期実績(セグメント別)

左の資料から、資源分野の利益は1370億円、非資源は1840億円と、こちらも概ね1対2の割合になっています。そして右の資料から利益の高い順に資源・化学品、金属、輸送機・建機、生活・不動産、インフラ、メディア・デジタル、となります。他の2社とは異なり金属セグメントが首位ではなく、資源(≒エネルギー)・化学品ビジネスが首位なのが特徴の1つと思います。住友商事は金属にはそれほど注力していないのでしょうか。またセグメントの分類が他社と完全一致していないので正しい比較はできませんが、いわゆる機械(≒輸送機・建機)や生活系ビジネスの利益が大きい点は、伊藤忠商事と近い印象を受けます。

まとめ・・・3社とも非資源分野の強化によるバランスの良さが好印象

以上、3社の決算内容を見てきました。共通点としては全体の利益に占める資源分野の割合はおおむね3~4割にとどまり、利益の半分以上は非資源分野から得られています。その点から、得意な領域は異なるものの、3社共に景気や資源価格の影響を受けにくい非資源分野の強化が進んでおり、様々なセグメントでバランスの良い利益を出せる体質になっているなと感じました。

なお今期のように金属資源や原油・石炭といったエネルギー資源が高騰した時はそのビジネスセグメントで爆益を出せますが、資源価格はとにかくボラティリティが高く、その特性に依存する博打的な側面が否めません。その点からすると商社の企業としての強みの1つは非資源分野にこそあると言えるのかもしれません。

私は今回の確認を通じて、資源価格高騰の恩恵が近い将来に無くなっても、3社ともある程度の利益をあげられる確信を持つことができました。視界は良好です。

ここで対比的な見せ方になりますが、すでに第2四半期決算の発表を終えていた5大商社の一角である三井物産のセグメント別資料を↓に示します。

三井物産 セグメント別利益

先の3社とは逆に、三井物産は資源分野(金属+エネルギー)の割合が約60%を占めています。どちらが良い悪いという話ではなく、五大商社の株を購入する際には戦略に応じて各社の強みは異なるということを理解しておく必要があると感じました。

今回の記事は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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