【通期上方修正で最高益へ突き進む】電源開発(J-Power)2023年3月期第3四半期決算を発表

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1月31日の引け後に電源開発(以下、J-Power)が2023年3月期第3四半期決算を発表しました。

Jパワー、今期経常を6%上方修正・最高益予想を上乗せ(株探)

23年3月期第3四半期累計(4-12月)の連結経常利益は前年同期比2.9倍の1582億円に急拡大した。併せて、通期の同利益を従来予想の1550億円→1640億円(前期は728億円)に5.8%上方修正し、増益率が2.1倍→2.3倍に拡大し、従来の5期ぶりの過去最高益予想をさらに上乗せした。

株探

J-Power、絶好調ですね^^

ということで、今回発表された決算プレゼンテーション資料をベースに決算の中身を確認していきましょう。

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売上2倍、経常利益2.8倍の好決算 電力&石炭価格の高騰が寄与

まずは決算概要から確認します。

J-Power FY2022Q3 決算概要
J-Power FY2022Q3 決算概要

表の上部にある「連結」決算を見てみましょう。売上高は前年同期比で97%増(ほぼ2倍)となる1兆4015億円、営業利益や経常利益、そして純利益はそれぞれ前年同期比で152~188%(2.5~約3倍)の増益となっています。これは凄いですね。スライドの左にある増収増益の主な要因をみると、前回Q2決算の時と同じく、電力価格の上昇と石炭価格上昇が大きく寄与しました。そういえば私の自宅の電気代もちょうど1年前と比べて約2倍に跳ね上がっています。電力価格の高騰は一般家庭の生活にも大きな影響を与えていますが、J-Powerはその恩恵を十分に受けている企業の1つといえそうです。

電力・石炭価格の上昇以外についても、火力発電所の計画外停止の減少や米国発電所の稼働などJ-Powerがコントロールできる部分で着実に改善が見られます。この点も非常に高く評価できます。

上記の概要資料にも増益の主要因に触れていますが、経常利益の項目ごとの増減を示した資料がありますのでそちらも確認してみましょう。(画像をクリックすると拡大します)

利益増減要因(その1)
利益増減要因(その1)
利益増減要因(その2)
利益増減要因(その2)

①発電事業粗利、③海外事業子会社利益、④その他子会社利益/連結調整 の3項目が大きく利益を伸ばし、特に④の利益貢献がプラス545億円と大きいです。この項目は主にJ-Powerの豪州子会社が保有する石炭炭鉱の権益ビジネスでの稼ぎを示すようです。石炭価格の推移を確認してみると↓の通り2021年から上昇基調で現在も高値を維持しています。このように石炭価格の動向がJ-Powerの損益に大きな影響を与えていることがわかります。

石炭価格の推移
石炭価格の推移

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通期見通しも上方修正 本決算での株主還元追加に期待

続いて今回見直された通期の業績予想を見てみましょう。

J-Power FY2022通期業績予想(Q3時点)
J-Power FY2022通期業績予想(Q3時点)

表の上半分の「連結」についてみていきます。売上高は前回Q2での予想から更に750億円上乗せとなる1兆8690億円、経常利益は前回予想から90億円上乗せとなる1640億円に上方修正されました。なお表の下半分の「個別(=J-Power本体のみ)」の純利益は前年比で減益が予想されており、先ほど触れた豪州子会社等のグループ会社が利益を底上げする形になっているようです。

そして株のホルダーとして見逃せないのはスライド右側の配当についてです。前回Q2の好決算発表時に配当増額といった株主還元施策が何も発表されず不満でしたが、今回の上方修正でも配当は据え置きとされました。J-Powerは株主還元施策を公開しており、その内容は以下のようになっています。

短期的な利益変動要因を除いて 連結配当性向30% 程度を目安に、利益水準、業績見通し、財務状況などを踏まえた上で、安定的かつ継続的な還元充実に努めます。

今回発表された決算短信を見ると通期予想における一株当たりの純利益(EPS)は628円で、配当性向30%とすると188円が妥当な配当額になります。今回の爆益が上記の「短期的な利益変動」に該当するかどうかは議論が分かれそうですが、公表している還元施策の半額にも満たない配当で終わる状況はあり得ないでしょう。(配当据え置きの一方で自社株買いで還元する可能性はあるでしょうが)。スライドでは期末配当は「40円(予想)」と表記されておりますが、3か月後の本決算でその予想が変わる可能性は高いと私は思います。

上方修正となった通期の経常利益の項目ごとの増減要因についても見てみましょう。

通期 利益増減要因(その1)
通期 利益増減要因(その1)
通期 利益増減要因(その2)
通期 利益増減要因(その2)

先に示したQ3累積決算の内容とほぼ同じですが、違いがあるのは③海外事業子会社利益及び⑤持分法投資利益がそれぞれ前回予想からマイナス45億円、マイナス15億円となっている点です。これは当社が米国で運営する複数の火力発電所において寒波の影響で設備トラブルが発生し、発電しないといけない(と米国の法律で定められている)状況にも関わらず発電できなかったことによるペナルティ費用のようです(海外のビジネスではこのように日本の常識では考えられないような法律リスクがあって難しいですね)。ただこの一時的なマイナスを織り込んでもなお、前回予想から上方修正されたので、あとはこの予想の通りしっかりとビジネスを進めてほしいですね。

ちなみに⑦の為替差損益は前回予想からマイナス15億円となっていますが、対象となる通貨は日本円・タイバーツのようで、他のグローバル企業とは異なり米ドル・円のレートはJ-Powerのビジネスにはあまり影響しないようです。

最後に参考(Appendix)の中に含まれていた以下のスライドが少し気になったので触れておきます。

J-PowerとENEOSの合弁会社
J-PowerとENEOSの合弁会社

J-Powerと石油精製・販売で国内最大手のENEOSが、CCSの事業化のために合弁会社を設立するというニュースです。

いま、二酸化炭素(CO2)を削減する方法として注目されているのが、排出されたCO2を集めて地中に貯留してしまおうというアイデアです。さらに、集めたCO2を何かに役立てることができれば一挙両得です。

(中略)

地球温暖化の原因のひとつとなるといわれる二酸化炭素(CO2)。その削減は、世界的にも重要な課題となっています。

石油や石炭など「化石燃料」と呼ばれる燃料をエネルギーとして使う火力発電では、このCO2が多く排出されてしまいます。とはいえ、天候に左右されず、すぐに発電できる火力発電は、エネルギーの安定的な供給をおこなうため必要な電源(電気をつくる方法)です。そこで、火力発電のCO2排出量をおさえる(低炭素化)ため、さまざまな取り組みがなされています。「CCS」「CCUS」はその取り組みのひとつです。

「CCS」とは、「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、日本語では「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれます。発電所や化学工場などから排出されたCO2を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入するというものです。

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccus.html

私はENEOSの株ホルダーでもありますがこれら2社がCCSの事業化でタッグを組むというのは、なんだか熱いものを感じます(笑)。J-Powerは洋上風力発電所の建設など、カーボンニュートラルの観点でも様々な取り組みを行っていますが主力の発電所はいまだに石炭火力であるため莫大なCO2を排出しています。一方のENEOSも石油精製過程でCO2を大量に排出しています。そういったネガティブな事業内容に対し、2社の力を合わせることで良い方向に向かえばホルダーとしては非常にうれしいですね。

今回の記事は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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