【メガバン好調】三井住友FG & みずほFG “OK”、三菱UFJFGも期待大 でもみずほを買わない理由

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こんにちは、トムです。

日本のメガバンク3行と言えば高配当銘柄(配当利回り約5%)として株式投資家には人気が高く、私も 三井住友フィナンシャルグループ(以下、三井住友FG)と三菱UFJフィナンシャルグループ(以下、三菱UFJFG)の2行の株式を配当目的で保有しています。みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)は後程触れる理由で持っていませんけど(^^;)。

メガバンクは国内&海外企業への融資の利息が主な利益源となりますので、その決算は世界の企業活動の活性度≒世間の経済状況を映している側面もあると言え、3行の決算内容はいつも注目されています。

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三井住友FG と みずほFG の2Q決算は好調 & 増配も発表

先週11月12日に三井住友FGとみずほFGの2022年3月期第2四半期(2Q)決算が発表されました。以下の記事の通り、結果は数字だけ見れば2行ともに増収増益 & 通期見通し上方修正と、好調な決算でした。

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みずほ、純利益8割増も障害重荷 新サービス投入できず - 日本経済新聞
みずほフィナンシャルグループ(FG)が12日発表した2021年4~9月期の連結決算は、純利益が前年同期比79%増の3856億円だった。証券関連業務が好調だった。融資の焦げ付きに備えた費用の計上が少なく済んだことも利益を押し上げた。ただ、システム障害の再発防止に追われ、新しいデジタルサービスは打ち出しにくい。不安が潜む好...

そして2行ともに以下の通り増配を発表しています。

大幅な増益と上方修正にも関わらず増配を見送る企業もある中で(例えばこちらの企業とか)、しっかりと増配してくれるのは、高配当株投資家としては非常に嬉しい限りです。

また好調な決算発表を受けて、決算発表後の三井住友FGの時間外取引(PTS)では2%以上の高値で取引されており、週明け11月15日には4,000円を狙う勢いを見せています。(みずほFGのPTS価格は12日の終値からほぼ横ばいです)

三井住友FG PTS価格(2021/11/12)
三井住友FG PTS価格(2021/11/12)

ちなみに週明け11月15日にはメガバンクの三菱UFJフィナンシャルグループ(以下、三菱UFJFG)の2Q決算も控えています。既にメガバンク3行の22年3月期の連結最終利益の総額が2兆円を超えるという報道があり、その中で三菱UFJFGは最も多い1兆円超えが予想されています。従ってその決算内容には大いに期待できますし、2行の増配発表を受けて三菱UFJFGも増配する可能性は高いと考えられます。

この記事にもある通り、メガバンクは世界的なコロナ渦からの回復と経済活動本格化により主な融資先の大企業を中心に業績回復が進んだことで収益が改善しています(これまで本ブログで決算レビューを記事化した企業のほとんども好決算&上方修正でしたね)。グローバルの観点ではコロナ渦からの回復状況は地域によって未だにまちまちですから、経済活動の本格化に伴う利益の増加はもうしばらく続きそうな気がします。

ということでメガバンクの2Q決算は良好で、経済状況という視点では今後も業績の好調さは続きそうな雰囲気です。しかし私は3行の中でみずほFGについては大きな経営リスクを抱えているため、3行の中で唯一株式を買っていませんし今後も買うつもりは全くありません。

今回の記事ではいつもと若干視点を変えて、私がみずほFGの株は買わない理由を述べていきたいと思います。

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みずほFGの経営リスク ダメすぎる基幹システムと、経営陣のITに対する理解不足

私は一応IT企業に勤めるシステムエンジニアですのでシステムのことについてはある程度精通しています。みずほFGが抱える経営リスクは、傘下のみずほ銀行の基幹システムであるMINORIの存在にあります。みずほ銀行は2019年に約4,500億円を掛けてこのMINORIをリリースさせましたが、多くの方はご存じの通りMINORIは今年に入り全部で9回のシステム障害を起こし、そのシステム管理は事実上金融庁の監督下に置かれています。

今回の決算で発表された通期計画の中で、合計で130億円ものシステム障害対応費用が見込まれています。信頼性が高いシステムであれば見込む必要のないシステム障害対応に130億円もの巨額の経費を計上しないといけない点は、メガバンクの中でみずほFGだけが抱える経営リスクです。

そして先の記事に記載されている障害原因のほとんどは「機器故障」となっていますが、これが全く理解に苦しみます。ハードウェアはいつか必ず壊れます。だから故障に備えて冗長化等で耐障害性を高めるのは当たり前のことですし止まっては困る基幹システムであれば尚更です。冗長化も二重化ではなく三重化やマルチサイト等、お金は掛かるがハード故障による停止リスクを最小化するべきです。しかしこの銀行は4,500億円も掛けて何を作ったんでしょうか?

トム
トム

余談ですが、4,500億円というのは東京スカイツリーが7本建てられる金額だそうです(苦笑)

そしてこれも良く指摘されていますが、システムベンダーを1社に絞れていない点がシステムが複雑化し、障害が頻発する一因とされています。

みずほ銀行は2002年に旧第一勧銀、旧富士銀、旧日本興業銀の3行が合併・統合してできた銀行ですが、統合後の基幹システムは当初予定されていた旧第一勧銀システムへの片寄せから、3行のシステムをくっつけたものに変更されました。つまりシステムベンダーも旧3行の御付きベンダー(富士通(旧第一勧業銀行)、日立製作所(旧日本興業銀行)、日本IBM(旧富士銀行))がそのまま統合後の基幹システムを部分的に面倒を見ることになったのです。

そんな複雑化したシステムとベンダー体制をみずほ銀行が適切に管理できなかった結果、2002年4月に大規模なシステム障害を引き起こしました(私は2002年に社会人になったのでこのニュースと影響の大きさは良く覚えています)ちなみに三井住友FGと三菱UFJFGの基幹システムベンダーは1社です。

しかしこのような重大かつ重要な反省事例がありながら、このMINORIはこの記事にある通りそれら3ベンダーに加えてNTTデータも加わり計4つのベンダーが構築に関わるという、全く反省を活かせてないどころかあるべき姿とは真逆の行いをしています。

ベンダーマネジメント(ベンダー管理)という言葉があります。これは未だに横行する企業からITベンダーへのシステム構築・開発の丸投げではなく、企業側が主体的にベンダーの構築・開発状況を管理したり、ベンダーと適切なコミュニケーションを取ることで、当初の目的に沿ったシステムを完成させることを目的としています。

ベンダーが1社の場合と4社の場合でのベンダーマネジメントの難易度・複雑度は4社の方が当然高くなりますし、その差は天と地ほどの差があります。例えばある機能を1つ追加しようとすると、担当のベンダーと仕様を固めた上でそれ以外のベンダーが担当する様々なシステム機能との整合性が合うかを全て確認した上で、全てのベンダーを巻き込んで開発・テストなければなりません。これに伴うシステム管理コスト(開発・テスト作業負荷、コミュニケーション負荷、プロジェクト管理負荷)は膨大なものになります。

つまり現在のMINORIを運用していく以上、システム管理コストも他行と比べて膨大になるということです。それにこの記事で指摘されている通り4ベンダーが関わったためにシステムは複雑な設計をしています。こちらの記事ではMINORIのシステム障害は永遠に終わらないのでは?という指摘がされていますが、システム自体の複雑さ、ベンダーマネジメントの難しさ等を考慮すればあながち間違いではないと言わざるを得ません。

そしてこのような状況を招いた根本原因(真因)を探っていくと、ITシステムに対する経営陣の無理解にたどり着きます。

この記事によると「稼働から2年は安定稼働を重視して予算を投じ人員も確保していたが、足元では人員・保守コストの削減に入っていた。(中略)稼働後にはコスト構造改革で開発部門は大幅に要員が削減され、維持・メンテナンス体制が恒常的に要員不足となっていたと記載されていた他、MINORIの構築・設計に携わったメンバーが異動や退職でいなくなった後、その引き継ぎも十分でなかったこと」とあり、更にこちらの記事では「障害原因が特定されていないにも関わらず、MINORIの大きな目的の1つであるコスト削減を達成すべく経営陣が突っ走った」ともあります。


ITシステムと経営は密接に関わります。事実上、一体のものと言っても過言ではありません。こんなことは私が言うまでもないと思います。しかし過去の重大トラブルにも関わらずベンダーを減らすどころか増やす決断をし、コスト削減という対外的なお題目のためにITシステム要員を大幅に削減しシステムの安定性を自ら損なう決断を下すところを見る限り、みずほFGの経営陣はITシステムのことを全く理解できていないように思えてなりませんし、経営陣のITガバナンスなんて効くはずがありません。

ついでに言えばこちらの記事ではみずほFGの経営陣はシステムだけでなく営業現場に対する無理解も指摘されており、旧来からの組織構造の問題点も指摘されています(組織論は私の専門外なので詳しくは触れませんが、ONE xx というお題目を唱えているのは逆に会社の中は全くONEになっていないのでしょうねw)。この記事が正しいとすれば、ITシステムも営業現場も軽視するいまの経営陣は一体何をしているのでしょうか?何のために存在しているのでしょうか?私には全く分かりません。

この記事を読む限り、MINORIのシステム管理が金融庁の監督下に入ったことで、事実上システムの機能追加が自由にできなくなっていると思われます。これは即ち新規のビジネスやサービスを自由にはリリースできないことを意味します。これは経営にとってあまりにも大きいリスクです。

フィンテックという言葉に代表されるように、現在銀行業でも斬新で新しいサービスが次々とリリースされる時代です。しかしみずほFGは競合他行の斬新な新しいサービスのリリースを指をくわえてみてることしかできません。MINORIに関する問題が解決しない限り、他行との経営上の差は時間が経てばたつほど開いてしまいます。

これが私が三井住友FGと三菱UFJFGの株式を保有する一方で、みずほFGの株式を保有しない理由です。

MINORIはリリースされてからまだ2年しか経っていませんが、問題の根本解決方法の1つはこのMINORIを捨てて1社のベンダーと新たなシステムを構築することです。しかしおそらくITシステムに無理解な今の経営陣にそのリスクが取れる人は存在せず、MINORIの継続稼働を選ぶでしょう。そうすればシステム管理コストが巨大になるという問題は間違いなく残りますし、先に述べた通りみずほFGと他行との差は時が経つにつれてどんどん開いていき、徐々に経営上の数字にも表れてくるでしょう。

今回の記事は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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