【言わんこっちゃない・・・】ENEOSホールディングス 2023年3月期第3四半期(3Q)決算で通期見通しを大幅下方修正

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2月10日の13時に国内エネルギー最大手のENEOSホールディングス(以下、ENEOS)が2023年3月期第3四半期決算を発表しました。

ENEOS、今期最終を58%下方修正(株探)

23年3月期第3四半期累計(4-12月)の連結最終利益は前年同期比71.1%減の960億円に大きく落ち込んだ。併せて、通期の同利益を従来予想の3300億円→1400億円(前期は5371億円)に57.6%下方修正し、減益率が38.6%減→73.9%減に拡大する見通しとなった。

 会社側が発表した下方修正後の通期計画に基づいて、当社が試算した10-3月期(下期)の連結最終損益も従来予想の812億円の黒字→1087億円の赤字(前年同期は3257億円の黒字)に減額し、一転して赤字計算になる。

株探

私は第2四半期(2Q)決算レビュー時に以下のコメントの通り、2Q時点の通期予想が楽観的過ぎる点を指摘していました。

>通期では前年並みの予想だが、ハードルはかなり高い

>「石油製品他」だけで下期1400億円の利益を出すというのは難しい気がします。

だから言わんこっちゃない・・・

通期で57%の下方修正というのはさすがに前回の見込みが甘すぎたと言われても仕方ないと思いますが、実際はどういった内容が修正されたのでしょうか。ということでここからはいつもの通り決算説明資料を確認していきます。

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本業のエネルギー事業が壊滅的状況 石油・ガス開発と金属は堅調

まずは3Q累計の全体決算概要を見てみましょう。

ENEOS HD FY2022Q3 決算概要(全体)
ENEOS HD FY2022Q3 決算概要(全体)

まず売上高は前年同期比でなんと49%増の11兆3351億円もの売上を挙げています。これは率直に言って凄い数字ですね。これは主に原油価格の高騰と為替レートによるものだと思われます。一方、利益はというと全項目で減益という厳しい内容になっています。ENEOSの決算を確認する際の注意点として本業の利益は「在庫影響除き営業利益」が示していますのでそこに注目すると、前年同期比で約1000億円減益(37%減)の1714億円に留まりました。そして当期利益は71%減となる960億円となり、11兆円の売上規模からすると非常に物足りない数字に終わっています。

具体的にどの事業が低迷したのかについて、次にセグメント別の実績資料を見てみましょう。

ENEOS HD FY2022Q3 決算概要(セグメント別)
ENEOS HD FY2022Q3 決算概要(セグメント別)

大きな減益となったのは”やはり”本業のエネルギー事業です。ここでの在庫影響除き営業利益は前年同期比で1202億円ものマイナスとなり、763億円の赤字です。前回2Qのレビュー記事を確認すると上期は490億円の赤字でしたので、赤字幅が拡大してしまいました。

一方の石油・天然ガス開発事業は前年同期比で240億円(34%)プラスの956億円となりました。エクソンモービルやシェブロンといった米国のエネルギー大手企業は主にこれらの川上の開発事業で爆益を挙げていましたが、ENEOSもこの領域については大きな利益を挙げました。

そして主に銅を扱う金属事業の実績は前年同期比でわずか58億円(5%)の減益となる1169億円でした。こちらは先に示した全体資料に記載の通り銅(LME)の単価下落による影響と思われます。しかし単価は14%下落したものの事業としては5%の減益に留めており、金属事業そのものの強さを感じます。以前にも指摘したことがありますがENEOSの半分は金属資源企業と理解した方が良いかもしれません。

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次に赤字幅を拡大させたエネルギー事業の詳細を見てみましょう。

エネルギー事業 利益増減(3Q累計)
エネルギー事業 利益増減(3Q累計)

4つあるセグメントの内「石油製品他」「石油化学製品」「電力」の3つが大幅な赤字となっており、特に石油製品他は前年同期から800億円もマイナスです。理由を見ると「油価下落に伴う大幅なマイナスタイムラグ」が主因とあります。これは数か月前に下落した油価の影響が今期(3Q)のタイミングで発生したという意味だと私は理解しています(実際2022年5,6月頃から原油価格は下降しています)。ただしガソリン価格はここ数カ月の間に大きく下落したようには見えませんし、(他の化学企業の決算内容を見る限り)ナフサ価格が大きく下落したという話も聞きません。なので私はこの大幅な減益の理由を完全には理解できていません。

石油化学製品は他の化学セクター企業でも市況低迷で苦戦しているセグメントですがENEOSも例にもれず苦戦を強いられています。更にJEPXの電力卸価格の高騰や燃料調整費のタイムラグで電力セグメントも赤字です。わずかに素材セグメントのみエストラマー事業が好調で増益となりましたが、エネルギー事業は非常に厳しい状況に置かれていることが分かります。

ここまで3Q累計の実績を見てきましたがエネルギー事業の不振がとにかく大きすぎで、堅調な実績を挙げた石油・ガス開発と金属事業とは対照的な状況です。何度か登場した「タイムラグ」という言葉が象徴するようにボラティリティが高い原油価格や電力卸価格に事業が大きく左右された点は、エネルギー企業の宿命とは言えますが...また化学企業と同じく石油化学製品を手掛けているため市況低迷の影響を大きく受けました。そういった点では石油の川上から川下を一気通貫で手掛けている事の長所と短所が大きく出てしまったと言えます。また事業の多角化により石油とはあまり関係無い金属事業を手掛けている点は、今回の決算ではポジティブな結果を生んだとも言えるでしょう(金属事業が無かったらと思うとゾッとします^^;)

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「石油製品他」セグメントの大不振は4Qも継続 通期見通しを下方修正

続いて下方修正となった通期見通しを確認しましょう。

ENEOS HD FY2022通期見通し(3Q時点)
ENEOS HD FY2022通期見通し 全体(3Q時点)

在庫影響除き営業利益は前回(Q2決算時)の見通しの3400億円から1200億円マイナス(35%減)となる2200億円に下方修正されています。3Q累計の営業利益は1714億円でしたので、4Q単体で486億円の利益を見込んでいます。当期純利益は最初の株探記事でも触れた通り3300億円→1400億円と大きく下方修正されています。なお原油・銅単価、為替レートについては前回見通しから大きな変更はありません。

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次にセグメント別営業利益の見通しを見てみましょう。

ENEOS HD FY2022通期見通し セグメント別 (3Q時点)
ENEOS HD FY2022通期見通し セグメント別 (3Q時点)

最初にも触れましたが「石油製品他」セグメントだけでなんと1210億円の下方修正となっています。他のセグメントはほぼ前回見通し並となっていますので「石油製品他」の不振だけがとにかく大きすぎますね。しかしよく見ると赤字幅は120億円であり、3Q累計では381億円の赤字でしたので4Q単体で260億円ほど利益を挙げられる見込みとなっています。

この見込みは信じて良いものか?私はかなり疑問視せざるを得ません。繰り返しになりますが前回2Qの「石油製品他」の見通しが私でも予想できるくらい楽観的過ぎました。市場価格とタイムラグという2つの係数で利益or損失が左右される非常にボラティリティが高い事業であり、油断は全くできないと思います。

またそもそもの話としてあまりに大きすぎる下方修正は株式市場へのインパクトが大きく株価のボラティリティが高まりますので、二度とこのような事が無い事をENEOSには望みます。

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なお今回通期見通しは下方修正されましたが期末配当は前回発表の11円から変更無しとなっています。これは中期計画において「配当は22円を下回らない」還元方針に則ったものです。また1000億円の自社株買いを2月14日に完了(株を消却)するとのことです。

ENEOS HD 株主還元(FY2022Q3)
ENEOS HD 株主還元(FY2022Q3)

松井証券のNISA

決算で株価が2%下落 エネルギー事業の苦戦が続くか

最後に今回の決算を受けての株価推移を見ていきます。

ENEOS 株価推移 (2023/2/10)
ENEOS 株価推移 (2023/2/10)

決算発表があった2月10日の13時過ぎで株価を大きく下げ、終値は前日から2.29%下落となる456.4円で引けました。やはり市場は今回の決算をネガティブに受け止めました。まぁそりゃそうだよな、というのが私の素直な感想です。

今回の決算を見て次年度となる2024年3月期にも懸念せざるを得ません。先にも述べた通り、市場価格やタイムラグに大きく左右される「石油製品他」は3Qまでに大きな赤字を出しましたが4Q単体では黒字転換の見通しとなっています。しかしそれが外れ黒転しなかった場合は次年度に大きな懸念が持ち越されることになります。繰り返しになりますがENEOSの見通し通りに行くかは全く予断を許さない、それくらい厳しい状況に置かれていると私は思います。ENEOSの中期経営計画は今年度が締めとなりますので、次の本決算とともに新しい中期経営計画の内容も見ていく必要がありますね。

今回の記事は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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